高温超伝導の発見以来、文部省ではいくつかの科学研究費重点領域研究が組織され、そのメカニズムと特異な性質を巡ってホットな研究が行われた。その集大成が本書である。したがって、本書は現時点で世界でも最もハイレベルで、かつ、網羅的に高温超伝導の全貌を伝えるものといって良いであろう。しかしながら依然として、高温超伝導はその神秘のベールをまとったままである印象があり、読者は高温超伝導が示す多様な側面に驚き、また、解釈の相違点に気付くであろう。それが現在の到達レベルなのである。
各項の筆者は重点領域研究を担当した、各分野の中心的研究者であるので、記述のレベルは先端的である。編集者が苦労して作製した索引が、問題点理解の出発点として読者の役に立つであろう。後続の若手研究者や学生には唯一必携のハイレベルの書といえる。
(Vain3sue)