SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol. 8, No. 2, Apr. 1999.

10.1T peakの交流高磁界下で
9 kArmsの交流大容量NbTi超電導導体を開発
―古河電工―


 古河電気工業株式会社はNbTi超電導線の交流用導体を用いて、1T peak、50Hzの交流磁界中で9 kArmsの大容量交流通電に成功した。この研究は、通商産業省工業技術院ニューサンシャイン計画の一環としてNEDOからの委託を受け、Super-GMの研究テーマとして実施したものである。

 既に、昨年0.5 Tpeakの交流磁界下で世界で初めて10 kArmsの大容量交流通電に成功しているが、今回さらに高い1 Tpeakの交流磁界下で9 kArmsの大容量交流通電に成功したものである。

 超電導線に商用周波数の交流電流を流すと交流損失が発生する。交流用超電導線の交流損失を減らすためには、超電導フィラメント径を可能な限り小さくし(〜0.15 mm)、高抵抗マトリックスの中に埋設させ、かつ線径を小さくすることが有効である。その場合、1本の素線に流せる電流容量は小さくなり、大電流を流すためには多数本の超電導線を集合させることが必要となる。しかし、複数本の超電導線を集合させると(1)各素線間の電流の偏流が生じる、(2)交流磁界による周期的な電磁力により機械的な振動が起きて発熱する、等の現象により素線1本に流せる容量の集合本数倍の電流を流せないという問題がある。さらに高磁界側では臨界電流が低下するため、0.5 Tに比べて1 Tの磁界下でのクエンチ電流は1/2程度になることが多い。

 今回開発した交流用導体は外径約9 mmの6×6×12本3次撚構造で、交流磁界に対する安定性を増すため導体の撚構造と支持方法を強固にする工夫をした。その結果高磁界下における大容量通電が可能になったものである。

 開発を担当した同社超電導開発部の木村昭夫主任研究員は「1 T peakという交流磁界下で9 kArmsの大容量通電ができたことは、将来の応用が期待される超電導発電機の電機子巻線のように1〜1.5 Tpeak程度の高磁界下で10〜20 kArmsもの通電容量を必要とする機器への適用可能性がさらに増したものであり、今後実際の機器適用に向けての開発が期待される。」と話している。

(NU)