SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol. 8, No. 1, Feb. 1999.

9.通電損失評価法 新たな改良法
_ 横浜国大 _


 横浜国立大学電子情報工学科のグループでは、酸化物超伝導テープの通電損失測定と磁化損失測定を行っている。

 通電損失は電圧端子法により測定しているが、電圧端子リード線を試料テープ周囲に螺旋状に引き回す点に特徴を有している。この方法をスパイラルループ法と呼んでいる。テープ線材では、よく知られているように、丸線と異なり周囲にできる磁界が周方向に対して一様でない。従って、従来行われていたように矩形のリード線の引き出し方法を採用すると、矩形を十分大きくしないと正確な損失測定ができない。これに対し、スパイラルループ法では、最小でテープ幅を直径とする円筒面上にリード線を巻き付ければよいので省スペースである他,外部交流磁界とリード線ループが結合せず、交流磁界下での通電損失測定に適用できる点も大きなメリットである。

 磁化損失測定は、直線上の試料テープの数センチの区間に、改良鞍型ピックアップコイルまたは試料鎖交型ピックアップコイルを設置し測定している。前者はテープ面に平行な磁界下での測定用、後者はテープ面に垂直な磁界下での測定用である。テープの一部分を囲む直方体面上にピックアップコイルを巻きその面上での電界を測定し、マグネット磁界と合わせてポインチングベクトルを求めていると解釈すると理解しやすい。これらの方法は、原理的に、十分長いテープ線が一様な外部磁界にさらされているという状態での交流損失を測定するものであり、巻き線ではなく、テープ単独の性能をまさに評価していることになる。

 通電損失測定法も磁化損失測定法も、短い試料で可能な測定方法であるので、長い試料の得にくい先進的試作線材の損失測定にも適しているといえよう。

(rain)


スパイラルループ


改良鞍型コイル


試料鎖交型コイル