SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol. 8, No. 1, Feb. 1999.

15.米国の次世代線材研究は長尺化検討にシフト

_MRS 1998 Fall Meeting_


 イットリウム系超電導材料の線材化研究が米国において活発化している。昨年12月にボストンで開催されたMRS 1998 Fall MeetingでHigh-Temperature Superconductors - Material Challengesのシンポジウム中、HTS Thick Films and Tapesのセッションにおいて最新動向が明らかになった。

 米国での研究全体をDOEのJ.G.Daleyが総括的にまとめた。Coated Conductorの研究についてはLos Alamos National Laboratory(LANL)とOak Ridge National Laboratory(ORNL)が主導的に実施してきているが、面内配向超電導体の形成に必要なIBAD配向中間層テープやRABiTS配向テープはLANLやORNLから関連研究機関に供給する体制になっているようである。また、線材の長尺化の検討は主にORNLが担当し、3M社が電子ビーム蒸着法の連続化を独自に検討している。LANLは約1 m長のテープで1MA/cm2を達成している。最新のLANLのデータとテープ構造が示されたが、構成はハステロイテープ/YSZ/Y2O3/YBCOとなっており、日本で検討されている構造と同じになった。また、ORNLとLANLの共同研究として、IBAD法YSZ中間層上にBaF2法でYBCOを載せ3.2 MA/cm2を達成したと報告した。最近、米国ではこのBaF2法が盛んに検討されているが、RABiTSテープ(Ni)上ではBaF2法のJcが1〜2 MA/cm2にとどまっている。

 今回のMRSではRABiTS法Ni基板をメインに、中間層の複層化や、あらたな材料を組み合わせる研究報告が目立った。また、超電導層の合成プロセスとして、厚膜で高Jcが得られると考えられているBaF2法の検討が盛んになっている。

 LANLでは以前からテープを移動させた連続蒸着に着手し、既に高Jcを持つ1 m級線材を報告しているが、今回はORNLとIGC社から新たに連続テープ合成の報告があった。ORNLは電子ビーム蒸着によりRABiTS(Ni)テープを輻射加熱し、中間層およびYBCO層を形成するテープ巻き取り機構を持つ装置を導入した。線材の構成はNi/CeO2/YSZ/CeO2/YBCOで、YBCOはBaF2法で作製し、0.35 m/hでテープを移動させプリカーサを形成している。熱処理後のJc値は0.33 MA/cm2である。また、短尺での結果だが、新しい中間層構成としてRABiTS(Ni)/Y2O3/Yb2O3/YBCOを採用し、1.2 MA/cm2を得たことを報告した。IGC社は巻き取り機構を装備した連続CVD装置により、ハステロイ/IBADYSZ中間層、および配向Ni/CeO2中間層上にYBCOを連続形成している。CeO2中間層は0.3μm以上の厚さなるとクラックを生じることが問題である。IGC社でもハステロイ/YSZの組み合わせで0.1 MA/cm2以上のJcを得ている。

 今回のMRS Fall MeetingではLANLからの発表がなかったが、情報通によると、Bostonは距離的に遠いため、例年、春に西海岸で開催されるSpring Meetingに参加することが多い、との話であった。

(HMJ)