本システムは、C形の鉄ヨークと患者空間の上下に設けたポール鉄板に装着した2個のパンケーキ・コイルより成り、同コイルによって磁界を発生する。同コイルは、VAC(Vacuumschmelze)及びNST(Nordic Superconductor Technology)より供給されたBi-2223テープ(1.7 km及び2.8 km)を用いて、ドイツのシーメンス社とイギリスのオックスフォード社によって、個々に製作された。Bi系テープのJe(工学的電流密度)は1 Tに於いて50 A/mm2であった。18 Kの動作温度は、無冷媒真空容器中に設けられた1段式GM (Gifford-McManon) 冷凍機によって、各コイル毎に保持される設計になっている。
本マグネットは、8.25 MHz(0.2 T)で動作するシーメンス社製オープン型画像装置に組み込まれるように設計されている。新聞発表時点では、本HTSシステムによる画像化実験は未だ行われていない。シーメンス社/オックスフォード社の新聞発表において、関係者は、「将来HTSを用いたMRIシステムを実用化するためには、HTS線材のコストをkAm当り50〜100ドルに低減する必要がある」と語った。
以上、シーメンス社/オックスフォード社発表内容の紹介であるが、今回の成功は今後のHTS応用機器の発展、なかでもHTS線材の開発に対して大きなインパクトを与えるものと考えられる。今回提示された線材の長さ及び目標価格は、線材技術の今後の発展からすれば十分射程範囲に入るものであり、線材開発関係者の今後の頑張りを期待したい。
(相撲)