SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol. 7, No. 6, Dec. 1998.

8.HTSを用いたMRI用マグネットの開発に成功
_オックスフォード社/シーメンス社_


 この度、OMT(Oxford Magnet Technology)、OIRI(Oxford Instrument Research Instruments)及びSiemens社が3社共同開発により、高温超伝導線を用いた全身型MRI(磁気共鳴断層画像化装置)用超伝導マグネットの試作に成功したことが明らかになった。当マグネットは、9月9日患者空間で0.2 T(テスラ)、超伝導巻線においては1 Tの磁界を発生したが、HTSとしては全身型MRIマグネットへの世界初の応用例である。

 本システムは、C形の鉄ヨークと患者空間の上下に設けたポール鉄板に装着した2個のパンケーキ・コイルより成り、同コイルによって磁界を発生する。同コイルは、VAC(Vacuumschmelze)及びNST(Nordic Superconductor Technology)より供給されたBi-2223テープ(1.7 km及び2.8 km)を用いて、ドイツのシーメンス社とイギリスのオックスフォード社によって、個々に製作された。Bi系テープのJe(工学的電流密度)は1 Tに於いて50 A/mm2であった。18 Kの動作温度は、無冷媒真空容器中に設けられた1段式GM (Gifford-McManon) 冷凍機によって、各コイル毎に保持される設計になっている。

 本マグネットは、8.25 MHz(0.2 T)で動作するシーメンス社製オープン型画像装置に組み込まれるように設計されている。新聞発表時点では、本HTSシステムによる画像化実験は未だ行われていない。シーメンス社/オックスフォード社の新聞発表において、関係者は、「将来HTSを用いたMRIシステムを実用化するためには、HTS線材のコストをkAm当り50〜100ドルに低減する必要がある」と語った。

 以上、シーメンス社/オックスフォード社発表内容の紹介であるが、今回の成功は今後のHTS応用機器の発展、なかでもHTS線材の開発に対して大きなインパクトを与えるものと考えられる。今回提示された線材の長さ及び目標価格は、線材技術の今後の発展からすれば十分射程範囲に入るものであり、線材開発関係者の今後の頑張りを期待したい。

(相撲)