SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol. 7, No. 6, Dec. 1998.

3.123系バルク超電導体に新たな超微細ピニングセンター 
____超電導工学研・岩手県工業技術センター____


 超電導工学研究所盛岡研究所と岩手県工業技術センターは、混合希土類系123超電導体において、従来よりも1桁平均粒径の小さい211相の分散によって、液体窒素温度での臨界電流密度を飛躍的に向上させることに成功したと発表した。

 希土類元素として、Nd, Eu, Gdの3種類を1:1:1の割合で混合した123相と同様の混合希土類元素を含有する211相を30体積%添加した系をOCMG法(酸素分圧制御溶融法)で合成すると、平均粒径がY系の約10分の1である0.1 mmの微細な211相が分散することが明らかとなった。この結果、77 K, 3 Tで磁場をc軸に平行に印加した条件下で60,000 A/cm2という高い臨界電流密度を達成した。

 分散した211相には2種類あり、平均粒径が1 mmのものは、Nd, Eu, Gdを1:1:1の比で含有するのに対し、平均粒径が0.1 mmのものはGdのみを含んでいることが明らかとなった。その後の検討で、Gd211相のみを添加した場合でも同様の結果が得られるが、その場合でもNd, Eu, Gdを含む比較的粗大な211相が同時に生成するとしている。

 この結果に対して、開発者の超電導工学研究所盛岡研究所のMiryala Muralidhar博士は「OCMG法によって高性能希土類123系の存在が発表されてから、一貫して複数の希土類元素を添加する実験を行ってきているが、希土類元素を混合することで、予想外の結果がぞくぞく出てきている。今回の発表は、その中のひとつに過ぎず、この混合希土類123系は大きな金脈のような存在だ。ただし、なぜGd211相のみが、微細分散するかの機構は、いまだなぞであり、現在、その解明に取り組んでいる。」と抱負を語った。 超電導工学研究所の村上雅人第三研究部部長は「はじめに組織写真を見せられた時には、写真のスケールが1桁間違えているという指摘をした。その後、それが本物と確認できた時には本当に驚いた。混合希土類系では予測のつかないことが多くて、驚かされるとともに、材料研究の奥深さに感嘆させられている。」と語った。(田町引っ越しのS)