SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol. 7, No. 6, Dec. 1998.

2. 新型丸線と大容量モノリス線開発に成功
____ 昭和電線・ICG-AS __


 昭和電線とIGC-AS(Intermagnetics General Advanced Superconductors)は、共同でBi-2212丸線と大容量モノリス線材の開発に成功したとASC及び低温工学・超電導学会で発表した。Bi-2212超電導体は、熱処理に部分溶融-凝固反応を用いることから、ある一定の超電導フィラメントの径を保つことによって、丸線から平角線までさまざまな形状の線材で高いJcを得ることができるという特徴を持っている。この特徴を生かし、丸線と大容量モノリス線材という二つの全く異なる形状の線材を作製したものである。

 Bi-2212線材は、極低温で従来の金属系超電導体に比べて優れた磁界特性を持ち、高磁界マグネット、NMR、加速器用線材等の応用を目指して、開発が行なわれている。また、30 K以下の温度領域ではBi-2223テープ線材と同等以上の特性を有することから、冷凍機を用いたマグネットへの展開も期待されている。

 両社は1997年末より、Bi-2212多芯線材の開発を共同で進めており、1998年5月には中部電力と共同で300芯のBi-2212丸線材を用いて3.5 kAクラスの圧縮成型導体を作製し、発表している。2種類の線材のうち丸線は、この共同研究の一環として開発されたもので、直径0.8 mmで芯線数を従来の300芯から427芯に上げることで一本当たりのフィラメントのサイズを理想的な10 μm近辺とし、形状も丸から偏平したものに変更している(図参照)。これに加えて、圧縮成型導体撚り線時及びマグネット使用時にかかる応力を考慮して、最外層に500 MPaの機械強度と5 %以上の伸びを持つAg-Mg-Sb三元系強化銀を配置した。これらの変更により、Jcは340 kA/cm2(4.2 K、0 T)となり、300芯線の場合の170 kA/cm2に比べて2倍に向上した。加えて三元系強化銀シースの使用によって、純銀シースの場合に比べ、撚り線時の線速も数倍に向上させることが可能となり、実用的スケールの撚り線作業にも大きな利点となるという。

 他方、大容量モノリス導体は5 mm×1 mmのサイズで大型のコイルに適用する目的で開発されている。芯線数は両社のスタンダードタイプである300芯線と、フィラメントサイズを5 mm×1 mmという大型のサイズに合わせて設計した1800芯線の2タイプである。Jcは300芯線のタイプで130 kA/cm2(4.2 K、0 T)で、フィラメントサイズを最適化した1800芯のタイプでは250 kA/cm2(いずれも4.2 K、0 T)となった。通電容量は、1.6 kA(4.2 K、0 T)で10 T中でも800 Aの通電が可能であるという。

 このように、Bi-2212線材の特性を支配する基本となるフィラメントサイズと熱処理の適正化の技術が確立できたことで、用途に合わせた線材の設計が可能となり、特性も従来のテープ線材と遜色ない250 kA/cm2(4.2 K、0 T)のJcを達成できたことは、Bi-2212線材の用途展開に対して大きな道を開いたものと考えられる。

 昭和電線側で開発を担当している長谷川隆代主査は「この共同研究は、超電導粉末の配合、線材加工、強化銀開発、撚り線技術、熱処理技術のBi-2212線材開発における両社の得意分野を生かして進めているもので、相乗効果で研究開発期間の短縮と特性の大幅な向上が見られている。この研究を通してBi-2212線材の特性を維持しながら、さまざまな線材設計ができることがわかり、今後の実用化に対して一定の指針が得られた。今後は更なる特性向上と長尺化、撚り線化、コストダウンなどにも取り組んで行きたい。」とコメントしている。

(TSA)


図 Bi2212丸線(0.8mmd) 300芯と427芯