開会に先立ち、NEDOの門井龍太郎理事が「超電導技術については、1986年の高温超電導の発見以来実用化に向けた研究開発が盛んに進められており、国際的な情報交換なども行われるようになってきている。各国を代表する専門家の貴重な講演、またパネルディスカッションの場を通じて、今後の超電導技術の電力応用に関する研究開発の方向性が見えてくるものと期待している」と挨拶、午前中の講演に移った。
基調講演は、ドイツ、カールスルーエ研究所Peter Komarek教授の「ドイツにおける超電導技術の開発戦略とヨーロッパにおける研究開発状況」。その中で、超電導機器メーカーはユーザーのニーズや将来コストを詳細に分析した上で開発を進めるか中止するかを判断しており、技術的には可能性があったとしても経済性や市場規模を勘案すると実用化に向けて思いきった開発がやりにくいとのことであった。
続いて特別講演に移り、東京理科大学の正田英介教授が超電導発電機、SMES、フライホイールなどわが国における超電導応用技術の開発状況と将来展望について紹介を行った。またアメリカ、アルゴンヌ国立研究所のAlan M. Wolsky博士からは、ケーブル、変圧器、電動機、磁気分離装置など各機器毎に、DOEにより実施中の超電導技術の応用開発プロジェクトとその開発状況について紹介が行われた。
午後の講演では、ロシアの全ロシア電気機器研究所のLidia I. Chubraeva教授からはロシアにおける超電導同期機開発の経緯と現状のなかで、ロシアでは送電線の距離が長いため、送電容量確保の観点からも超電導発電機の開発を進めていく必要があるとの紹介があった。また日本の代表的な開発事例として、超電導発電関連機器・材料技術研究組合の上田隆右常務理事からは、同組合で現在進められている70 MW級超電導発電機の開発状況について、実証試験を通して得られている最新の成果を中心にした発表があった。 引き続いて行われたパネルディスカッションでは、正田教授をコーディネーターに、講演者であるKomarek教授、Wolsky博士、Chubraeva教授のほか関西電力京都支店の中川興史副支店長、電力中央研究所の植田清隆首席研究員がパネラーとなり、各国における超電導電力応用機器開発の課題や実用化への見通し、ブレークスルーの可能性などについて討論が行われた。討論では各国で開発を手がけている限流器、ケーブル、変圧器、SMESといった電力用機器の開発のメリットや経済性の評価、実用化の時期や規模について活発な意見や質問が出された。また、現在超電導電力応用機器として最も成果を上げているわが国の超電導発電機開発に対し、先導役を期待する意見が多く出された。
(SGM)