SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol. 7, No. 6, Dec. 1998.

10. 超伝導ロジックゲートの18GHz動作に成功
― U. C. Berkeley ―


 カリフォルニア大学バークレイ校の研究チームは、超伝導COSL(Complimentary Output Switching Logic)ゲートの18 GHz動作のデモンストレーションに成功したと発表した。このロジックは、Nb系非ダンプ型ジョセフソン接合の電圧スイッチングを用いてデザインされたもので、従来のジョセフソンコンピューターエレメントとして、開発が進められてきたものである。COSLは多目的要素のロジックファミリーに属し、こでまでにフラッシュA/Dコンバータ用エンコーダー回路として、8GHzでの動作確認がなされた。

 このロジックの重要な用途として、RSFQ(Rapid Single Flux Quanta)デバイスと常温環境エレクトロニクスの間のインターフェイスが挙げられる。同チームのMark Jeffery博士は、すでにCOSLロジックゲートをGaAsビットエラー率評価装置に接続することに成功したと報告している。なお、COSLのビットエラーレートは5 GHzで10-12、8GHzで10‐9であった。RSFQは、100 GHz程度のでの動作が期待されていることから、COSLの役目としては、DEMUX(データ通信を遅くして、並列処理を可能するRSFQのコンポーネント)を用いて室温環境とのインターフェイスを構することになる。

 従来型ロジックの開発では、日本が世界をリードしてきた。富士通では、1988年にすでに、4ビットジョセフソンマイクロプロセッサーの開発に成功していた。そのときの動作速度は1−2GHz程度であった。バークレイのグループは、その時の動作制限であった臨界電流、抵抗、インダクタンスなどのばらつきを、ランダムパラメータを考慮したモンテカルロ法により最適化した設計を採用した。その結果、動作速度を著しく改善できたとしている。現在の動作速度は、単純なCOSLにより達成されており、今後、複雑なシステムへの展開が期待される。同チームは、次のステップとして、RSFQとのハイブリッド化を目指していくことを計画している。このような周辺技術の開発は、実用化に向けた不可欠な要素であり、システム化を念頭に置いた研究開発は、分野を問わず、超伝導エレクトロニクスの成功の鍵を握ることになるであろう。

(LA)



図 高温超伝導サンプラーチップとサンプラーによる電流波形測定効果