SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol. 7, No. 5, Oct. 1998.

9. 70 MW級超電導発電機1500時間の連続運転に成功
____Super-GM・三菱電機____


 超電導発電関連機器・材料技術研究組合(Super-GM)は去る8月19日に70 MW級超電導発電機の1500時間の連続運転に成功したと発表した。今回、連続運転を行った低速応・高電流密度型の回転子(低速応型B機)の開発は三菱電機(株)が担当した。なお、この研究は通商産業省工業技術院のニューサンシャイン計画「超電導電力応用技術開発」の一環として新エネルギー産業技術総合開発機構(NEDO)からの受諾により実施したもので1988年から12年計画で実施している。

 超電導発電機(低速応型B機)は、Super-GM試験センター(関西電力、大阪発電所構内)に設置し、98年3月末から運転試験を開始、回転子の回転冷却試験についで電気試験を行い所期の性能が確認された。引き続き、6月16日から連続運転をスタート、6月17日に79.7 MWの定格出力に達し、456時間の連続定格出力運転と358時間の負荷変動運転(出力を20%から100%まで変化させる)を合わせて814時間の連続出力運転が実施された。1日2回、合計44回のDSS運転(定格出力運転と6 rpmの低速ターニングを交互に繰り返す)が行われ、8月18日まで合計1500時間の連続運転試験が終了した。

 長期運転試験において得られた主な成果はつぎの通りである。発電機の定格出力79.7 MWを長時間安定に発生することができ、DSS運転など繰り返し運転において再現性および安定性も非常に良好であることが検証できた。また、回転子の軸振動は基準値75 mmに対して40 mm以下で良好であった。

 さらに回転子の冷却特性も非常に優れていることが確認された。回転子はヘリウム液化機と組み合わせクローズド・ループで冷却する構成であり、図1 にその概略を示す。定格出力79.7 MWの連続運転における回転子の熱負荷は72 W(低温配管を含む)であり、また、試験の全期間を通して定格出力運転における熱負荷の変動は±1 W以内で安定稼働が確認できた。

 また、回転子を安定に冷却するためヘリウムの供給制御は重要なテーマである。この回転子はヘリウム液面を自律的に制御する方式を採用した。すなわち、液体ヘリウムの入口圧力(Pi)を一定の圧力に設定し保持するだけで、回転子内に自律的に平衡液面を形成するようにしたもので、熱負荷の変動など擾乱が加わっても供給圧力を一定にしておけば液面は一定に維持できる方式である。図2は発電機の出力を20%から100%まで変化させ、回転子の熱負荷が約5 W変化したときの自律制御の動作であり、熱負荷の変化に対応して液面位置と入口圧力(Pi)が自律的に変化し液体ヘリウムの供給バランスを維持している。

 この自律制御は理論通りに働き、また、長時間運転も極めて安定で信頼性が高いことが実証された。これらの成果については秋季低温工学超電導学会において発表される予定 (発表者は、三菱電機 小寺溢男氏、Super-GM 平尾俊樹氏 他)である。

 以上のように、低速応型70 MW級超電導発電機は所期の性能を達成するとともに1500 時間の長期信頼性試験を計画通りに実施でき、発電特性、振動特性および冷却特性ともに極めて安定で実用化に大きく前進した。

(南北)



図1



図2