SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol. 7, No. 5, Oct. 1998.

3.携帯電話用基地局HTSフィルター大量受注 ─米国STI社


 米国のベンチャーであるスーパーコンダクター・テクノロジー社が、米国内大手移動体通信サービス会社と、超伝導基地局用フィルターシステムの受注交渉に入っていることが明らかにされた。交渉の規模は50-300台で、来年末までにすべてが納入される予定のもの。うち50台はほぼ確定で、残りは条件交渉になる模様。

 同社は本年すでに20の移動体通信サービス企業と共同でフィルターシステムの実地試験を行っていたが、すべて満足な結果を得ており、通話可能量が2倍に増えた例もあったとされる。すでにフィールド試験期間を終了したものもあり、これらが受注に結びついているものと考えられる。

 いずれにせよ、実地試験を行っていたプロバイダーからの大量受注交渉が始まったことは、基地局受信用フィルターが真に実用レベルに達したと判定されたという意味で、高温超伝導の実用化に、またひとつ、マイルストーンが築かれたことになったといえるであろう。今後、他の移動体通信プロバイダーからの引き合いが当然予想される情勢となってきた。

 一方、我が国ではこのような動きはまだ出ていない。これは開発初期にNTTが移動体通信用フィルター技術に否定的な見方をしていたために取り組みが遅れたことも影響しているが、我が国の電波事情が米国ほどにプロバイダーにとって過酷でなく、良く整理されていることも一因とされている。米国では電波の割り当て帯域が細かく錯綜しており、多数のプロバイダーが入り込んでいることが技術的困難を高めているとされる。かつ、国土が広いことから多数の基地局を必要とし、通話を拾い上げるための基地局の感度と電波の選別の性能が極度に要求される状態となっている。

 必要が発明を生んだ例ともいえるかもしれない。しかしながら、早晩、我が国においても通信量増大が同様のニーズを引き起こすことになることは時間の問題といえよう。

(JJY)