SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol. 7, No. 5, Oct. 1998.

16.高温超伝導SQUIDの固有磁気ノイズ消去技術を開発!
___カリフォルニア大学___


 従来、YBCOを用いるSQUIDなどでは、転移温度を通過して所定の動作温度、たとえば77 Kまで冷却すると、周囲の磁界は量子磁束線の形で高温超伝導(HTS)薄膜へ侵入する。この磁束線の数は、磁界強度に比例する。これら磁束線が熱的活性化により動くと磁気ノイズを発生し、測定対象の微小磁界信号をマスクしてしまうという問題があった。

 この度、カリフォルニア大学バークレー校(U.C.Berkeley)のClarke研究室が上記のHTSSQUIDあるいはSQUID磁束計中で発生する低周波磁気ノイズを消去する新しい設計法を開発したことが明らかになった。この革新技術は、地球磁場中で定常的に動作するSQUIDに固有の磁気ノイズの問題を解消するものである。Clarkeグループは、薄膜に侵入する磁束線に対してエネルギー的に不利な条件を創り出すことにより、固有ノイズの源を消去した。即ち、単層SQUIDと磁束計に対して、YBCO薄膜の巾を薄膜中の平均磁束線間隔より狭くすることによって、上記条件を実現したものである。

 超伝導多層体を内蔵する装置において、一つのコイルがSQUIDに接続されている場合、そのSQUIDはコイルの全ターンを覆うことが出来る大きさでなければならない。これらの装置に対して、バークレー研究所の研究者は、薄膜の各条の巾が要求距離より狭くなるように溝や穴を設けたSQUIDを製作した。この技術を用いて製作した低ノイズ多層磁束計は、与えられたサイズに対して最高の感度を提供できるものである。ごく最近Clarkeグループは、1cmチップ上に沢山の穴を全体的に設けた構造の単層磁束計を製作した。Clarke氏は「その磁束計は、1ガウスの磁場中で冷却されたが極めて静かであり、良好に稼動した」と語った。

 バークレー研究所の発明は、磁場中で装置を冷却する静止応用に対するものであるが、ある応用では可動型のシステムが要求される。IBM社のR.Kochグループは、可動型のシステムを開発した。そのシステムは、Clarkeの目標である心磁計のような高感度は提供できないが、変動磁場中で移動しても良好に作動するものである。Kochグループは、非破壊検査(NDE)や秩序状態検出の分野に焦点を合わせており、確かに可動型システムが必要であるが、一方病院の心磁計システムは静止・定常型に留まっている。

 HTS SQUIDの開発者・供給者であるMagnesensors社のM.DiIorio社長は、「バークレーグループは、極めて重要な技術突破を成し遂げた。低周波ノイズを増加させずに、通常の磁場環境中でセンサーを冷却できる能力獲得は、非遮蔽環境で使用できるSQUIDシステム開発と関連する基本的重要課題の一つである。私が実際に見たのは、磁束計に対してこの能力が最初に実証されたことである」とコメントしている。

(こゆるぎ)