SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol. 7, No. 4, Aug. 1998.

4. NbTiで150 mmボアに1.0 Tpeak
世界最大1 MVA級交流超電導マグネット開発
−日立電線−


 7月13〜17日にイギリスの Bournemouthで開催されたICEC17において、超電導発電関連機器・材料技術研究組合(Super-GM)(Kaoru Takeda,Masamichi Chiba,Kunihiro Fukuda)と日立電線(Katsumi Miyashita, Hidezumi Moriai)のグループは、大容量交流超電導導体特性試験装置の開発成果を報告した。

 この装置は、主に交流 10 kA級超電導導体の交流磁界中での交流クエンチ電流および外部交流磁界損失の測定に使用する。この交流磁界発生用マグネットとして、1MVA級交流超電導マグネットを開発した。これらの研究は、通商産業省工業技術院ニューサンシャイン計画「超電導電力応用技術開発」の一環として新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO)からの委託により実施してきたものである。

 交流磁界印加用のφ150 mmのクリヤーボアを有するマグネットは、20〜60 Hzの範囲でLC共振回路により周波数調整されるが、50Hzで238Apeak通電により、1Tpeakの磁界を安定して長時間発生可能である。この時のコイル容量は、約1MVAとなっている。

 コイルは、高抵抗芯線のまわりにフィラメント径φ0.1mm、外径φ0.25 mmのNbTi/Cu-30Ni-Mn素線を12本撚り合わせた、φ1.6 mm(絶縁後)の一次撚線から巻かれている。この素線では、Cu-30Niマトリックスに添加した強磁性Mn原子による近接効果低減と、フィラメント径をφ0.1mmにまで均一に加工して可逆磁束運動が出現したことの重畳効果により、通電電流1A あたりのヒステリシス損失は、仏Alsthom社のT型素線の1/8と世界最小値が達成されている。線材設計は、素線の高性能化に関するこの10年間の研究開発成果を適用してなされている。芯線および各素線には、撚線後にピンホールからの導通がないよう十分厚いホルマール絶縁が施されている。

 このマグネットは、60Hzで 1Tpeak 発生時に約 9,900 Vpeak の端子電圧が発生するので、コロナ放電をできるだけ抑えるよう、また、巻線部には電界集中が生じないよう設計されている。また、励磁時に発生する電磁力に対して、超電導導体が動かないよう、コイル巻枠の導体固定設計ならびにエポキシ含浸テクニックについて十分検討されている。図1はφ150 mmボアマグネットの外観を、図2はφ100 mmボアマグネット (Type 1) とφ150 mmボアマグネット (Type 2) のロードラインを示したものである。どちらも同じNbTi一次撚線から巻かれている。前者の到達磁界は1.6 Tpeak で、この時の直流短尺Icに対する負荷率は89 % であった。後者のφ150 mmボアマグネットはクエンチさせていないが同様の高い負荷率を有すると思われるので、十分な余裕を保って1.0 Tpeak での運転が可能である。

(World Cup)


図1 φ150mmボアマグネット効果


図2 マグネットロードライン