SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol. 7, No. 4, Aug. 1998.

18. 超伝導標準化国際会議開催
(6/22〜26、フランクフルト市)


 6月22〜26日、IEC(国際電気標準会議)/ TC90(超電導委員会)の第5回会議がドイツ・フランクフルト市で開催された。日本が最初の幹事国を引受けて設立されたTC90の国際会議は、ほぼ隔年にこれまで4回、開催されている。[第1回(90年5月、東京)、第2回(92年11月、パリ)、第3回(95年4月、コロラド)、第4回(96年10月、北京)]

 今第5回会議は97年7月のポートランドWG会議後、長村委員長を中心に日本超電導委員会(JNC)が急ピッチ、綿密な準備を進めてきたこと、開催地がヨーロッパであったこと等で、中国、フランス、ドイツ、ポーランド、米国、韓国、日本と、これ迄で最多の7カ国25名の参加を得て、成功裡に終了した。

 表は、IEC/TC90の組織と標準化活動の現状を示すものであるが、今会議により各WG(ワーキンググループ)ともに1段階進捗し、IS(国際規格)に近づいた。すなわち、WG1(超電導用語)ではCDV(投票用委員会原案)が全10カ国賛成であり、本年2月にISとして発行されたとの報告があった。WG3(Bi系テープのIC測定法)では3rdWD(作業原案)に修正を加えてCD(委員会原案)にすることが承認された。WG4(Cu/Nb-Tiの残留抵抗比)では、4thWDを修正して、同じくCDにすることが承認された。WG5(Cu/Nb-Tiの常温引張り試験法)ではCDにいくつかの変更・修正を加えてCDVに進めることが承認された。WG6(Cu/Nb-Tiの銅比測定法)では、CDに若干の修正を加えてCDVに進めることが承認された。WG7(Nb3SnのIc測定法)では、昨年末のCDV投票結果が全10カ国賛成であり、次のFDISに進むことが承認された。WG8(酸化物等の表面抵抗測定法)では、今会議の議論を踏まえて、2ndWDを完成し、来年4月および7月に3rdWD および 1stCDを作成することが承認された。

 今国際会議の特徴は、酸化物を含めて 超伝導材料測定法の規格化が大幅に進展したことであるが、もう一つの特徴は新規格化を図るべく、我が国の事前研究成果を4件報告したことである。そのうちの一つ、AC損失測定法についてはNP(新業務項目提案)に取上げることに全参加国の賛同が得られた。三層構造導体(Cu/Cu-Ni/Nb-Ti)のIc測定法については、現ISの改訂版に盛込む方向で、WG2が改訂案を作成する事になり、副コンビーナに小川陸郎教授(豊橋技大)が指名された。Cu/Nb3Snの残留抵抗比測定法及び銅比測定法については、それぞれ1.5〜2年以内にNPを提案することになった。

 以上のように第5回IEC/TC90会議は、所期の目的を達成し、成功といえよう。次回の場所は未定であるが、来年秋に開催することに決まった。

 最後に標準化国際会議初参加の感想を記したい。まず、どのように議論し、調整し、決定するのかが関心事であったが、実際の討議に参加して、face to faceの会議の有効性を実感した。CDそしてCDV段階になると各国の利害が衝突する場面がいくつか現れたが、日頃の交信(E-mail, Fax)や、種々の人脈が役に立ち、Goodrich議長の冷静な人柄とあいまって、妥当な結論に達することができた。国際会議の有効性から期間を短縮してでも、頻度を増す方向が望ましく、次回は1.5年後に3日間に短縮して開催することになりそうである。我が国は幹事国として、今会議を含め、規格化活動を主導してきており、新規先導的分野で国際貢献の一翼を担っている。多くの研究者、技術者の積極的参画と暖かい支援とともに、政府機関からの財政的支援をお願いする次第である。

(YF)