SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol. 7, No. 4, Aug. 1998.

14. 緑陰提言
超伝導応用の発想転換─冷却の制約を外すと?


 超伝導応用の最大の障害は冷却。そこで、「きちんとした冷却は不要」と、制限を1つ緩和して考え直してみよう。それは、室温超伝導出現と近いインパクトを持つ。

 マニア向け玩具の電池寿命は、数分から数10分というのは珍しくない。その短い命の間に最高のパフォーマンスを発揮する。これがマニアの夢だ。となると、超伝導をキープできる温度がたとえ数分でも続けば、そして、パフォーマンスをあげることさえできれば、マニアは使ってくれる。アクチュエータカセットを液体窒素で冷却、ラジコン飛行機にカチッと装填して、数分間飛ばすといった芸当が可能か。この場合、超伝導装置は新聞紙などで包んで断熱。断熱コストはほぼゼロ。超伝導楽器とスピーカーは高低音がよく伸びる。

 実のところ、玩具というのは、非常に高いパフォーマンスを要求される。他人より低性能では面白みが半減する。「日本では軍事需要が無いから・・・」という嘆き?が技術開発担当者から良く聞かれるが、コストパフォーマンスからすれば、軍事技術より玩具はさらに極端かもしれない。何より開発は楽しい。

 そこで、あらゆる玩具の超伝導化を考えてみよう。たとえば、サッカーロボットのワールドカップ開催決定。もちろん、電源コードなどルール違反。自律性が条件。しかし、関節や移動などに結構なパワーが必要だ。低速トルクも大きくとりたい。電池駆動での悩みは低電圧大電流。超伝導が使えたら・・という声が聞こえてくるような気がする。

 最後に「何の役に立つのですか?」という問が良くある。現在日本最大の利益を挙げているさる企業のペットロボット開発担当者のショッキングな言葉を載せておきたい。

 「我が社が今までなにか役に立つものを開発したことがあると思いますか?」

 たしかに、ウォークマンもかなり高性能な玩具であった。

(提案者:東京大学工学部 北澤宏一)