同社は、将来における電力の安定供給と効率向上を達成するために送電ケーブルやフライホイール等の超電導技術の電力分野への応用に積極的に取り組んでいるが、今回の発表も一連のプログラムの一つという事である。
Bi系の超電導線は超電導粒子の配向性を得るためテープ形状にすることが必要であり、その導体化には形状的に制約があった。また被覆材の銀が熱処理によって銀が軟化する為に、大型の機器装置を考えた場合、機械強度に問題があった。この導体では、補強材の周囲にBi-2212の丸線を撚り合わせて集合化する事により高強度・大電流の導体を作製することに成功している。この導体は将来的にはSMES(超電導電力貯蔵装置)等への応用が考えられるが、それ以外にも大型コイルなどの高磁場応用への導体としても期待される。
この導体はパウダー・イン・チューブ(PIT)法で作製された300芯のBi-2212銀シース線材(直径0.8 mm)をテープ状補強材の周囲に螺旋状に撚った構造で、銀シース線材と補強材の間にセラミックスの拡散遮蔽層を持った構造となっている。補強材は、Bi-2212酸化物超電導体を合成する際の熱処理による高温酸化に対して十分耐性を持つように考慮された、Niベースの合金テープ材(幅:6 mm、厚さ:1 mm)が選択されている。この導体の強度は熱処理後においても600MPa以上となり、SMES等の機器の応用に十分な値となっている。補強材の表面には熱処理に伴う超電導線材への補強材元素の拡散を防ぐために、セラミックスの拡散遮蔽層を設けており、これによってBi-2212線材の特性が導体化・熱処理後も100%得ることが可能となった。導体は、幅7 mm、厚さ2 mm程度の外形に仕上がっており、かなりコンパクトな形状に収まっている。
この結果は、低温工学・超電導学会でも発表された。
(TH)