SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol. 7, No. 2, Apr. 1998.

5. 超電導技術で電力貯蔵の実現に大きく前進


 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、電気エネルギーを回転慣性エネルギーに変換して貯蔵する基礎実験に成功した、と4月3日に発表した。高温超電導体と永久磁石の反発力で37 kgのフライホイールを浮上させ、30,000 rpmで回転させて0.5kWhのエネルギー貯蔵を達成したもの。将来の実用化に向け大きく前進したとしている。

 NEDOは、通産省のサンシャイン計画の一環で、平成7年度より5年計画で「高温超電導フライホイール電力貯蔵の研究開発」を実施している。電力需要地に近接した配電変電所に分散配置して効果的な日負荷平準化を行う目的である。同研究では、 10 MWh級のシステムついて回転制御を含めたフライホイール及び高温超電導材と永久磁石を組み合わせた高温超電導磁気軸受に関する要素技術研究を石川島播磨重工業、光洋精工、四国総合研究所、電力中央研究所、ISTEC、新日本製鐵、セイコーエプソン、日本精工、三菱電機、東京電力で実施している。5年間でシステムの実現可能性及び実現に向けての課題を明らかにする。

 今回の発表は、回転制御という要素技術における一つの研究成果という。これまで実用化されているフライホイールを使ったエネルギー貯蔵は、瞬時停電補償や系統安定性向上が目的であり、稼働時間は数秒から数分の短時間であった。これは、軸受部の損失が大きいためである。そのため、非接触型の軸受に対する期待が高まってきているが、回転体の振動を抑制する技術が不可欠であり、高速回転を達成した例はほとんどない。そこで、光洋精工が制御型磁気軸受を振動抑制に使用し、超電導磁気軸受で支持した回転体を高速で回転させる要素研究を担当した。

 フライホイール本体はコーン型ハブで主軸に締結する構造で、石川島播磨重工業が製作した。本体、ハブともにCFRP製である。回転体の自重を支持した超電導磁気軸受に用いた超電導材料は YBCOで、新日本製鐵が製作し、回転永久磁石はセイコーエプソンが製作した。ネオジウム系磁石を用い、遠心破壊防止のために外周部をCFRPで補強しているのが特徴である。制御型磁気軸受を含むシステム全体は光洋精工がとりまとめ、3月末までに同社の総合技術研究所にて目標回転数30,000 rpmを達成した。制御型磁気軸受はディジタル制御を取り入れ低速から高速まで振動を安定化できたことが特徴である。30,000 rpm時の回転体の振れは半径方向で約10μmという。

 今後は、本システムを四国電力松山発電所に用意したテストピットに据え付け四国総合研究所が各種試験を実施する予定である。





写真:0.5kWhフライホイール機構部の外観