SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol. 7, No. 3, Jun. 1998.

4.ボア1m級の工業用大型冷凍機直冷方式
              超電導マグネットを製品化
_三菱電機_


 三菱電機は、冷凍機1台での直冷方式の超電導マグネットとしては最大級の常温ボア(φ1250mm)を有する工業用超電導マグネット(写真)を開発したと98年春期低温工学・超電導学会において発表した。同社は94年に高エネルギ−物理学研究所(当時)にXバンドクライストロン用の冷凍機直冷式超電導マグネットを製作納入して以来、GM冷凍機により直接冷却される液体ヘリウムを使用しない超電導マグネットの開発・製作を継続し,加速器のビームラインに設置されるスピン偏向用・ビーム収束用として、ボア径150 mm、中心磁界6 Tのマグネットなどを製作してきている。近年、シリコン単結晶引上げ装置用マグネットを中心に、工業用のボア径が1m以上の超電導マグネットの需要が発生してきており、同社はこれをターゲットに開発したものと思われる。

 今回、三菱電機が開発したマグネットは、液体窒素配管等の予冷装置がなくGM冷凍機1台により常温から超電導状態までの初期冷却をおこない、極低温状態での冷却を維持している。常温からコイルが超電導転移するまでの所要時間は約175時間とのことである。冷凍機直冷式の超電導マグネットにおける必要事項である年1回程度の冷凍機メンテナンスにおいて、同社はマグネットを冷却した状態で冷凍機の交換作業を可能とすることにより、マグネットの停止期間の短縮化を図っている。

 三菱電機では従来からNbTi超電導線を冷凍機直冷式超電導マグネットに使用しているが本マグネットにおいても同様とのこと。開発担当者の一人である三菱電機電力産業システム事業所(神戸)今井良夫氏は「工業用マグネットにおいて、冷凍機直冷式超電導マグネットの常温ボアサイズに対する要求はさらに大きくなりつつあり、今回の開発をステップにこれらのニーズに応えていきたい。」と述べている。

(KHC14)



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