SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol. 7, No. 3, Jun. 1998.

10.NbTi超電導線で10 kArmsの交流大容量導体を開発
−古河電工−


 古河電気工業株式会社はNbTi超電導線の交流用導体を用いて、0.25 Tpeak、50 Hzの交流磁界中で10 kArmsの大容量交流通電に世界で初めて成功した。この研究は、通商産業省工業技術院ニューサンシャイン計画の一環としてNEDOからの委託を受け、Super-GMの研究テーマとして実施してきたものである。

 超電導線に商用周波数の交流電流を流すと交流損失が発生する。交流用超電導線の交流損失を減らすためには、超電導フィラメント径を可能な限り小さくし(〜0.15 μm)、高抵抗マトリックスの中に埋設させ、かつ線径を小さくすることが有効である。その場合、1本の素線に流せる電流容量は小さくなり、大電流を流すためには多数本の超電導線を集合させることが必要となる。しかし、複数本の超電導線を集合させると

 ・各素線のインピーダンスの不整合による偏流が生じる

 ・交流磁界による周期的な電磁力により機械的な振動が起きて発熱する

等の現象により素線1本に流せる容量の集合本数倍の電流を流せないため、通電容量は5 kArms程度にとどまっていた。

 これらの問題点を解決するために、素線の断面構造と撚線構造の見直しを行い、10 kArmsまでの通電を可能としたものである。開発した交流用導体は、直径0.2 mmの超電導線6 本をキュプロニッケルの中心線に撚り合わせた1次撚線をさらに6本撚り合わせて2次撚線とし、この2次撚線を12本撚り合わせて合計432本の超電導線を集合した外径約9 mmの3次撚り導体である。なお、さらに高磁界での通電試験も行い、最高では0.5 Tpeak、50 Hzの交流磁界中で9 kArmsの交流通電に成功した。以上の結果は、Super-GMが通産省工業技術院電子技術総合研究所(つくば市)に設置した、交流大容量超電導導体特性評価試験装置を使用して得られたものである。

 開発を担当した同社超電導開発部の木村主任研究員は「まだ交流外部磁界が小さく、将来の応用が期待される超電導発電機の電機子巻線では1.5 T peak程度の磁界下で10〜20 kArmsの通電容量が必要である。今後、さらに高い磁界中での評価を実施していきたい。」と話している。

 商用周波数の交流磁界中でも大容量通電が可能であることが実証されたことで、大電流を必要とする交流超電導電力機器の実現に向けた開発を促進することになろう。

(NU)