日本は文部省が中心となり、非加盟国としてはいち早くLHC計画への協力を表明し、これまでに88億5千万円の建設協力資金を拠出している。CERNはこの資金協力を根拠として、主電磁石用NbTi超電導線材の一部を日本メーカに発注することを決定し、1997年8月電線メーカ3社に入札参加を要請した。古河電工は、この中で、技術力、価格競争力、生産能力が高く評価され、1997年12月契約候補メーカとして認定された。現在、契約の細部確認が進められている。
古河電工の加速器用超電導線への取り組みは20年以上の歴史を有し、TEVATRON(米国フェルミ研究所)、HERA(ドイツDESY研究所)、TRISTAN(日本旧高エネルギー物理学研究所)、RHIC(米国ブルックヘブン研究所)、SSC(米国SSC研究所)など国際的プロジェクトに参加するなかで、永年にわたり、技術力を培ってきていた。この取り組みが、今回の受注の背景になっていると考えられる。
今回、古河電工が供給することとなるのは、主超電導双極および四極電磁石用NbTi成形撚線である。線材構成は、直径0.825 mmの素線36本を撚線し、幅15.1 mm、平均厚さ1.48 mmの楔型断面形状に成形した平角撚線である。それぞれの素線は、直径6ミクロンのNbTiフィラメント6,426本が螺旋状に無酸素銅に埋め込まれた構造となっいる。納入数量は、約600 km、100トンの規模で、2002年12月までに納入する予定となっている。受注総額は20億円規模で、古河電工としては、過去最大の超電導製品受注となった。プロジェクトの推移によっては、契約規模の拡大も含みに残す契約内容となっており、古河電工は全社の総力を結集して、本プロジェクトに取り組む決意を固めている。
新機能製品事業部の目黒信一郎営業技術部長は「最近、超電導応用といえば、高温超電導体を利用する開発に大きな期待が寄せられているが、金属系超電導線を利用する低温超電導応用も着実に進歩している。我々としては、高温、低温両者にバランスのとれた研究開発が、21世紀につながるとの認識で、戦略的な超電導技術開発への取り組みをしているところである」と語っている。
(Dark Brown Eyes)