SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol. 7, No. 1, Feb. 1998.

2. 山梨リニア実験線で最終目標の時速550 kmを達成
− JR東海、鉄道総研 −


 昨年末の12月24日、JR東海と鉄道総合技術研究所は、山梨実験線で走行実験を進めている超伝導磁気浮上式リニアモターカーが、同日、無人走行で最終目標の時速550 kmを達成したと発表した。本誌掲載記事(Vol.6, No.2)のように、走行実験は昨年4月から始まり、5月下旬には浮上に成功。その後速度を上げ続け、12月12日531 km/hを達成した。1979年旧国鉄が宮崎県のリニア実験線で記録した517 km/hと90年にフランス高速鉄道TGVが出した515 km/hのいずれも更新し、世界記録となった。山梨実験線では、500 km/hで安定走行させるのが当面の目標であり、そのために10%増しの550 km/hを達成できるか否かが技術的課題とされていた。

 今回の走行実験により最終目標(550 km/h)を早々と達成したJR東海と鉄道総研の技術力は高く評価され、今後の進展を大いに期待させるものである。これで昨年の走行実験はほぼ終わり、新年からは第2編成を投入してすれ違い実験を進めたり、車両を現在の三両編成から増結したりする予定という。

 因みに、上記第2編成は昨年10月山梨実験線車両基地に搬入され、公開されたもの。この第2編成の基本的仕様は、第1編成と同一だが、実用化に向けた新しい確認事項が盛込まれている。形式は第1編成と同じMLX01型で甲府方先頭車、長尺中間車、標準中間車、東京方先頭車の4両編成である。異なる形状を持つ先頭車の向きを振替えることができ、異なる先頭車同志がすれ違えるように考慮されている。また、第1編成との車両組替えにより最大5両編成での走行が可能である。

 第2編成では、新仕様として@定員70名の長尺中間車の導入 A 2段の防振装置を組み込んだ弾性支持台車の採用 B静かな誘導集電装置を東京方先頭車に搭載、等を盛込んでいる。この第2編成は、定置調整や機能試験の後、本年春から走行実験に入る予定となっている。

 山梨リニア実験センターの関秋生所長は自信を持って次のようにコメントしている。 「鉄道としての世界最高速度を達成できましたことは、この方式が世界の頂点に立ったもので、大変意義のあることでありますが、同時に営業目標速度500 km/hへの余力が確認できました」

(こゆるぎ)



写真 : リニアモーターカー
(写真提供 : 鉄道総合技術研究所)