SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol. 7, No. 1, Feb. 1998.

16. 海外で高い引用度
− 日本の超伝導基礎物理論文 −


 このほど二つのソースから物理分野での論文引用の件数が発表になった。論文引用の件数に、日本における高温超伝導研究分野のアクティビティの高さが示されている。

 その第一はフィラデルフィアの Institute of Scientific Information による1997年最後の4ヵ月の引用頻度調査によるもので、物性研松田祐司氏らによるジョセフソンプラズマの論文(Phys. Rev. Lett., 75 (1997) 4512)が低温物理学分野のトップ10に入っている。トップ10のうち高温超伝導体関係の論文は5つ入っており、第1位はアルゴンヌ国立研究所のDing らによる光電子分光の Nature に出された論文であった。

 その第二はフランスの Lemans 大学より発表されたもので、1981年より1997年までの16年間にわたる物理学分野全体の総引用件数の最も高い1120 人の研究者を抜き出したもの(1120 Most Cited Physicists 1981-1997)。これには、論文総数、引用の平均値、総引用件数などが示されている。この中には日本から、超電導工学研の田中昭二氏(物理全体の16位)を始め、東大工内田慎一、東大物性研高木英典、東大工十倉好紀、名大理佐藤正俊、東北大金研小林典男、東北大理高橋隆、前金材研(現東北大金研)前田弘、東北大理遠藤康夫、東大理福山秀敏氏ら多数が上位にランクされているもよう。(ただし、名前はイニシャルしか発表されていないので、確実な判定は不可能。また、同姓同名の人が物理分野にいる場合には、両方の引用が合算してカウントされるなどの問題があるとされていることを承知願いたい)。この発表は

http://fluo.univ-lemans.fr:8001/1120physiciens.html

で見ることができる。ちなみに第1〜5位はWITTEN E., GOSSARD A.C.,CAVA R.J., BATLOGG B., PLOOG K.で CAVAおよびBATLOGG両氏が高温超伝導関連と見られる。超伝導における材料および応用技術部門での日本の寄与はすでに海外において定評のあるところであったので、このように物理部門での評価が海外でも高かったことは、日本の基礎研究国際貢献において、高温超伝導分野の活躍が認められたことになろう。

(JJY)