SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol. 7, No. 1, Feb. 1998.

15. 日米高温超伝導ワークショップ報告2(基礎分野編)


 基礎分野については日米両国から約30件の報告がなされた。その中から記者の聞く機会があった講演について以下概略する。デバイス関連の基礎分野としては、立木(金材研)によるJosephson Plasmaの理論的取り扱いと、それを実証する薄膜作成技術の現状が鯉沼(東工大)から報告され、次世代デバイスへの期待を抱かせた。臨界電流密度に関わる基礎研究としては、 Larbalestier(University of Wisconsin)によるBi-系テープにおけるJc阻害要因の詳細な検討、腰塚(ISTEC)によるNdBaCuO単結晶のピニング機構、Krusin-Elbaum(IBM)によるHg系へのイオン照射効果、Wu(University of Kansas)によるHg系薄膜のピニング機構、さらに下山(東大)による高濃度Pb添加Bi2212単結晶におけるピン止め力の大幅な向上等の報告がなされ、HTSの現象論的理解が確実に進展している感を強くした。また、定方(フジクラ)によりion-beam assisted deposition (IBAD)法が報告され、YBCO線材の今後の可能性を示すものとして注目された。材料プロセッシングの分野としては、 塩原(ISTEC)によるRE123系の単結晶育成、太刀川(東海大)によるTl系相形成におけるF添加効果、 Reich(NHMFL)によるゾルーゲル法Hg系薄膜作成等の報告がなされた。また、材料プロセッシングを支える基礎研究としては、Wong-Ng(NIST)による、(Bi,Pb)-Sr-Ca-Cu-O系の状態図、山路(東工大)によるYBCOの酸素拡散等の報告があった。また新超伝導材料としては室町(無機材研)が(Cu,Cr)系高圧安定相を報告した。最後に、Schrieffer (NHMFL)による高温超伝導の理論的展開についての特別講演があり多くの聴衆を集めたことを報告して筆を置く。

(HP)