SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol. 7, No. 1, Feb. 1998.

14. 日米高温超電導ワークショップ報告1 (応用編)


 97年12月8日より10日まで、米国フロリダ州、州都タラハシーの国立強磁場研究所(NHMFL)において、日米高温超電導ワークショップが催された。参加者数は米国側から約80名、日本側から約30名であり、研究発表数は約60件であった。また、応用分野の研究発表と基礎的分野の研究発表は、ほぼ同数であり、双方共に活発な議論がなされていた。

 高温超電導の応用分野についてみると、線材化、コイル化に関しての発表が応用分野の中の6割程度を占め、線材化、コイル化に関しての研究が盛んであることが示された。メートル、アンペア当たり何ドルのケーブル、線材といった情報を提出した団体(ASC、EURUS、IGC)もあり、実用レベルにある線材を印象づけた。例えば、EURUSのケーブルは$100/kA/m、電流リードは$1000/kA/mであった。具体的に線材、コイルの応用例、目的が示された発表としては、東芝の山田氏らによる単結晶引き上げ装置用の永久電流モード高温超電導コイル、NHMFLのH. Weijers氏による強磁場マグネットのインナーコイルへの適用(17 T中約1 T)、住友電工の小林氏による1000 m級のBi-2223線材、昭和電線の長谷川氏によるAg-Mg-Sb合金による強化線材や冷凍機冷却型のBi-2223高温超電導マグネットとがあった(20 K、2.5 T)。山田氏による永久電流モードのBi-2223コイルは、線材のn値が小さく(約2.5)永久電流の減衰率が大きいという問題があるものの、電流を定格よりovershootさせた後、定格電流値に戻す方法により永久電流の減衰率を0.3 ppm/h以下に抑えていた。超電導線材のn値は永久電流モードの応用を検討する際必ず問題とされ、金材研の熊倉氏や日立の岡田氏らによっても取り上げられた。熊倉氏によるディップコートによるBi-2212テープのn値は10 Tの磁場中でも10以上と大きい値を示していた。

 IGCのP. Hadler氏は、NiテープにCeO2、YSZのバッファ層を設けた上にYBCO膜を生成させる方法、react & wind法によるBi-2212コイルの成果を報告していた(1.0 T、at 4.2 K and 5 T)。その他、線材に関しては、sol-gel法によるZrO2膜をテープ上に形成して絶縁層としたり(NHMFL、Y. Hascicek氏)、超電導材をコーティングした銀テープを銀パイプ中に束ねて線材化する(Argonne National Laboratory, S. E. Dorris氏)といった、興味深いものもあった。

 バルクの応用の分野においては、新日鉄の手島氏によって、フライホイールへの適用を目的としたYBCOバルクについての発表がなされていた。また、ケーブル、電流リードを実用化した発表も数件あり、なかでもEURUSのR. Hodges氏により、商品としての電流リードが会場内に回覧される場面もあった。会場内に回覧された電流リードは両端に銅電極がついており、それを覆うようにFRPのカバーが取り付けられていた。中の様子は見られなかったが、YBCOのファイバーを束ねているとのことで、13 kAの通電が可能とのことだった。その他、住友重機械の柳谷氏は、鉛を添加しないBi-2223バルクの電流リードを冷凍機冷却型Nb3Sn超電導マグネットに適用し、2.5 Tの磁場を発生させたことを報告していた。東海大、山田氏により拡散法によるBi-2212バルクも電流リードへの応用を試みた発表だった。

 以上、日米ともに実用を意識させるものであり、超電導の産業利用に希望を持たせるものであった。

(Lenore)