交流通電時に導体に発生する交流損失は、送電損失と同時に冷却用の液体窒素の温度上昇や圧力低下を招くため、小さく抑える必要がある。今回、この転位型セグメント構造を実現するために、従来の約半分の幅の銀シース線材を新たに開発した。導体に用いられているセグメント導体は、表面を絶縁処理したテープ状線材5本を、テープ面を平行にしたままひねった「転位構造」となっており、絶縁された各素線間のインダクタンスが均等になるよう工夫されている。ケーブル導体はこのセグメントがコルゲート管周にスパイラル巻きされている。この新しい導体構造は、高電流密度化や低交流損失化が期待されているイットリウム系次世代線材にも適用可能な構造となっている。
絶縁についても、高熱伝導性を持つ固体絶縁材料を新たに開発した。また、冷却によるケーブルの収縮対策として、ケーブルをスペーサーとともに冷却管路内に収納し、収縮歪みを緩和する構造とした。
いっぽう、ケーブルは、冷媒である液体窒素を圧送することにより冷却されるが、長距離のケーブルの場合に冷媒の圧力損失が無視できない。可とう性を確保するためには冷媒管や外装管などにコルゲート管を用いるが、これまでコルゲート管に関する信頼性の高い冷媒圧力損失のデータがなかった。そこで、コルゲート管に加圧した液体窒素を流した時に生じる圧力損失や温度上昇を測定できるモデルシステム試験装置を構築し、実験により得られたデータを試作品に反映した。
(HMJ)