SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol. 6, No. 6, Dec. 1997.

7. Bi2223銀シースツイスト線材の開発
− 東京電力・古河電工 −


 酸化物超電導線材を用いた超電導交流ケーブルは、高い電流容量を得るために金属フォーマ上にBi2223銀シーステープを螺旋状に多層積層化したスパイラル導体構造である。このスパイラル導体の交流損失を低減する方法としては、多層スパイラル導体の各層の電流を均一化しする方法が実験的に確認されている(東京電力-古河電工)。97年10月岐阜で開かれたISS'97および97年11月高松で開かれた秋季低温工学・超電導学会で、高温超電導ケーブルの交流損失を更に低減するための進歩的な方法が、東京電力と古河電工から発表された。

 この発表によると、交流損失を低減する方法として、Bi2223銀シーステープ線材のフィラメントをツイストさせる方法である。Bi2223銀シーステープ線材は、フィラメントサイズとして数十μmのBi2223フィラメントを数十本埋め込まれた構造となっている。従来の線材では、このフィラメントは、ツイストされていなかった。そのため、この線材が交流外部磁界に曝された場合、個々のフィラメントが磁気的に結合し、テープの中で一本のフィラメント群として振る舞い、大きなヒステリシス損失を生じていた。交流応用を考えた場合、フィラメント間の磁気的結合を切る必要があり、商用周波数領域ではフィラメントのツイストピッチとして10 mm程度以下の線材の実現が期待されていた。

 同グループの発表によると、幅3.3 mm、厚さ0.18 mm、銀比3.5の55芯の銀シースBi2223テープで、Jc = 14,300 A/cm2の臨界電流密度をもつ長尺線材の開発に成功した。また、同グループが実施した素線での交流損失の測定結果では、周波数50 Hz、磁場振幅Bm = 9.8 mTの交流外部磁界中で、素線の交流損失は12 J/m3で、Bm = 23 mTで41 J/m3であった。これはツイスト無しの線材の交流損失がBm = 9.8 mTで24 J/m3Bm = 23 mTで67 J/m3あることから、40〜50%の交流通電損失の低減が図られたことになる(図1)。

 さらに、この線材を用いて5 m長の導体を作成して、導体での交流損失も測定している。それによると、5 m-6層導体で、従来の導体に比べ20%程度の交流損失の低減が図られたことが確認できたと発表している(図2)。

(ネアンデター)



図1 : ツイスト線材の交流損失測定結果




図2 : 5 m-6層導体の交流損失測定結果