使用した7 T超伝導ウィグラ(写真2)は、NbTi/Cu線材による3対のコイルから形成されており、冷却の簡素化を図るために、酸化物超伝導電流リードと小型冷凍機が用いられている。その特長を次のように述べている。
ウィグラ装置の外形寸法は長さ830 mm、幅800 mm、高さ1,400 mmとなっている。冷凍機冷却型の酸化物超伝導電流リードは、内径20 mm、外径23 mm、長さ140 mmの円筒状ビスマス系バルク体で、2対の電流リードを1台の2段式ギフォード・マクマホン(GM)冷凍機によって冷却している。GM冷凍機の1段冷却部と2段冷却部の間、及び2段冷却部と超伝導コイルの間、それぞれに設置され、合計8本の円筒状ビスマス系バルク体が用いられている(写真3)。
この小型SRリングは「オーロラ−2D」と呼ばれており、レーストラック状の円形部に偏向電磁石を持ち、直線部に7 T超伝導ウィグラが設置されている。SRリングの寸法は、幅3.8 m、長さ12 mと小型である。偏向電磁石からの放射光の臨界波長は1.4 nmで、7 T超伝導ウィグラからの放射光の臨界波長は0.5 nmが得られている。この結果、物質の構造解明の研究用途の観点から見ると、偏向電磁石からの放射光で構造解析できる原子は、一般的に原子番号28番のNiまでの化合物であるが、7 T超伝導ウィグラからの放射光では原子番号42番のMoまでの化合物が可能になるという。
超伝導マグネットの電流供給導体として酸化物超伝導体は広く普及しつつあり、長期間の使用実績も報告されており、材料としての信頼性が得られてきていると言える。超伝導マグネットを使い易くする要素として酸化物超伝導電流リードの役割は極めて重要になっていると言える。
(cherry)
写真2 : 7 T超伝導ウィグラ
写真3 : 超伝導ウィグラ用の冷凍機冷却型ビスマス系酸化物電流リードユニット