SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol. 6, No. 6, Dec. 1997.

21. 超電導の標準化活動活発に


 最近、超電導材料測定法の標準化・規格化を目指す活動が活発化していることが注目される。工業規格は、当該材料が社会の中でどれだけ多く利用されているかを映す鏡であるといわれている。ご承知のようにJIS規格には、用語規格、試験規格、製品規格の3段階がある。超電導材料については、最初の用語と試験法の段階であり、金属系と酸化物系間にテンポの違いはあるが、愈やく工業材料として市民権が得れつつある表れと思われる。以上、2〜3の具体例を交えて最近の標準化動向を紹介したい。

◆ISS'97標準化セッションを設置
 国際超電導産業技術研究センター(ISTEC)主催の国際超電導シンポジウムISS'97(10/27-30, 岐阜市)では、本シンポ初の標準化セッションを設置し、国内外5名による招待講演が行われた。最初の講演は、Goodrich博士(NIST)による世界的な超電導材料測定法標準規格の進展に関するものであった。ベルサユープロジェクト(VAMAS)/作業部会(TWA16)や国際電気標準会議(IEC)/TC90委員会(超伝導)における近年の活動を総括し、RRT(持ち廻りテスト)の有効性を強調していた。
 2番目の講演者は、南京非鉄金属研究所のHua教授であり、Bi系テープのIc測定及びYBCOの表面抵抗測定等、中国に於ける標準化の活動状況を報告した。
 3番目は、和田博士(金材研)によるVAMAS/16作業部会の活動状況についての講演で、Bi系テープのRRT結果を取り入れたガイドラインがまとまり、TC90/WG3に移して規格化を検討する段階に来たと報告した。次の講演は、Hull博士(アルゴンヌ国立研)によるHTSバルク材の浮上力に与える各種要因の影響を検討したものであった。最後は、Ono博士(NIST)によるHTSエレクトロニックスに関するもので、フィルター特性等で問題となる薄膜の表面抵抗を空洞共振法、誘電体共振法、マイクロストリップ線路法で比較測定した結果など興味深い講演であった。総じて、極めて有意義なセッション会議であり、来年以降もこの様なセッション設置の継続が望まれる。

◆IEC/TC90の概要
 IEC/TC90は、89年7月超電導分野の標準化の為の技術委員会として設置され、日本が幹事国を引受けた。当時、TCの幹事国を日本が引受けるのは初めてであり、先端技術分野である超電導の標準化を国際的に推進する意義は大きく、国際貢献の面からも画期的事業として位置付けられ、工技院より積極的な支援を受けている。活動の拠点として、ISTEC内にIEC/TC90超電導委員会(JNC)を設置し、幹事国業務に対応している。TC90の国際会議は、これまで4回開催されている。第1回会議(90年5月、東京)では、議長の選任、WG1(用語)及びWG2(測定法)の設置等を決定した。第2回会議(92年11月、パリ)では、WG2の活動内容を規格ごととし、WG2〜7に分割設置、新規WG(エレクトロニックス測定法)の設置を提案した。第3回会議(95年4月、コロラド)では、各WGのコンビーナ及びセクレタリーと今後の活動計画を決定した。第4回会議(96年10月、北京)では、韓国の参加を得てWG8(エレクトロニックス)の正式発足が決定され、WG2(NbTiのIc測定法)のCDV(投票用委員会原案)投票結果によりFDIS(最終国際規格案)へ進むことが承認された。次回会議は、98年6月ドイツにて開催の予定である。IEC/TC90の組織と各WG活動状況を下表に示す。TC90活動の詳細については、京大長村教授他による解説論文が"低温工学"の最新号(Vol.32, No.12 1997)に掲載されているので、そちらを参照されたい。

◆JIS規格"NbTiのIc測定法"制定される
 現在、超電導応用機器の大部分にNbTi系線材が使用されているが、このNbTi線材のIc測定法がTC90で最初の国際規格(IS)としてまとまりつつある。前節で述べたように、WG2が本規格化作業を続行し、昨年の北京会議でCDV結果(全員賛成)が報告され、現在FDIS回付の最終段階に入っている。最終投票を経て、近い将来ISとして制定されよう。一方JIS規格の方は、IS化を先取りして国際規格に整合化したJIS原案をWG2で作成し各機関の審議を経て、本年3月JNC技術委員会の最終承認を受けた。本原案に基き、本年9月20日日本工業標準調査会によりJIS H 7301として制定され、10月10日発行された。国際整合化超電導JISとしては第1号の記念すべきものである(我国独自の超電導用語集としてJIS H 7005があるが)。本JIS以降には、現在CDV段階にあるWG7(Nb3SnのIc測定法)がH7302候補に、CD段階にあるWG1(超電導用語)が旧JIS H 7005の改訂版になる等次々に続く予定である(本JISを欲しい方は下記へ申し込めば定価1,800円の10%引きで入手できます)。
 標準化、工業規格とか普段余り聞かないが商取引における物差しであり、当材料が普及するにつれ必要性が増すであろう。規格制定の為には、膨大なバックデータが必要であり、多くの研究者、技術者の熱心な努力なしには仲々達成できない。皆さんのより積極的な参画と温かい支援をお願いしたい。

(YF)

<連絡先>
IEC/TC90超電導委員会事務局(国際超電導産業技術研究センター内)
〒105 東京都港区新橋5-34-3栄進開発ビル6階
TEL:03-3459-9872
FAX:03-3459-9873