SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol. 6, No. 6, Dec. 1997.

2. 1 kWh(3 MJ)超電導フライホイール実験機の公開


 中部電力(株)は、ISS'97に合わせて開催された超電導フェア in 岐阜において、三菱重工業(株)と共同研究を進めている超電導フライホイール本体とこれに組み込まれる超電導磁気浮上ベアリング及び炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製ロータの一般公開を行った。

 超電導磁気浮上ベアリングに使用されている超電導体は、先に同和鉱業(株)と共同開発した10 cm級大型疑似単結晶バルクの台形型を使用しており、これを9個、通常のガラス繊維FRPを使用したケーシングに埋め込んだもので、スラスト軸受けとして使用する。浮上側はネオジウム系焼結磁石の2重リングとなっており、最外層には炭素繊維の補強リングが組み込まれている。このスラスト軸受けは、2 mmギャップで180 kg以上の浮上力を持っており、1 kWh実験機の設計荷重70 kgに十分な性能を持つという。

 CFRP製フライホイールロータは、外径60 cm、内径45 cm、高さ7 cm、重量14 kgの3層構造リングを2段配置したもので、当グループが実用化へ向けた大容量型の基本コンセプトとして提案している多段ロータ構造となっている。

 回転速度は、設計定格2万 rpmとなっており、この時ロータには1.40 kWh、1万 rpmの回転時では0.35 kWhの回転エネルギーを持ち、1万 rpm−2万 rpmの間で、1 kWhの入出力を行う。ガスタービン等の一般的な回転機では、定格の15 %程度の過回転性能が必要とされるそうで、これの2倍以上、35%となる2万7千 rpmまでの回転試験を終了しているという。

 今回の展示終了後、組立、初期試験に入るといい、技術的な課題は、ロータの大型化を可能とする材料開発とバルク体の低コスト化にあるという。一部には、イットリウム系より磁場特性の優れるネオジウム系バルクが有望との意見もあるが、軸受けとして対で使用する希土類永久磁石の発生磁場が4000〜5000ガウス前後にあり、この磁場領域では、むしろイットリウム系バルクの方が特性が高く、作り易さの点でもイットリウム系が有利としている。

 また、イットリウム系においても、ネオジウム系に類似な磁場ピーク特性を持つバルク体の開発を最終日のポスターセッションで報告しており、今後の展開が期待される。

 実用システム構想としてHTc-SMESとフライホイールを組み合わせ、それぞれの共通周辺設備である低温冷却システムと電力変換器を共有し、時間応答領域を分担させたハイブリッド電力貯蔵(HES-Hybrid Energy Storage-system)の発表も、同じ最終日のポスターセッションであった。貯蔵容量としては、40 MWh(出力10 MW×4 h)のシステムで、フライホイーユニットは、単機5 MWhを8機、これに10 MW×1秒に相当する4 kWhのHTc-SMES、1機を配置したサイトイメージとなっている。電力貯蔵システムとして、都市近郊の配電用変電所に配置し、負荷平準効果を持たせるには、最低でもこの程度のものは必要になるとのこと。

今回の1 kWh実験機は、その構造、仕様が実用機のスケールモデルとなっているとのことで、今後の超電導技術実用化へ向け、その結果の報告が待たれる。

(FW listener)



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