SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol. 6, No. 6, Dec. 1997.

19. 超電導サミット ISIS-6報告


 第6回国際超電導産業サミット(ISIS-6)は1997年9月17日〜19日にイタリアのフローレンスで開催された。同会議はCSAC(Council on Superconductivity for American Competitiveness)米国、ISTEC、日本、CONECTUS(Consortium of European Companies Determined To Use Superconductivity)欧州の3極が毎年、持ち回りで開催している会議である。今回はCONECTUSがホストとして開催したもので欧州33名、米国12名、日本25名、計70名の参加があった。本会議の特色は学術会議ではなく、企業経営のトップ、政府プロジェクト及び大学関係者の会議であり、サミットの由来もそこにある。年1回のサロン的雰囲気の性格もあるが、企業経営者にとって貴重な情報交換の場でもある。

 今回のテーマは「超電導産業の市場予測」である。市場予測は93年(箱根)96年(山梨)と、これまでに何回か取り上げられたテーマであるが、企業経営者にとって最大の関心事であり、熱心な議論がされた。ISIS-5においても3極それぞれの意見の同意はなかなか得られなかったのであるが、超電導全産業の合計は2020年で最大24兆円(1 $=100円)に達する、というコミニュケを発表した。今回の欧州側は確実な根拠に乏しい未来予想よりも、前年度(1996年)の実績値を正確に積算し93年のデータの外挿値とどのように異なるかを評価し、以後毎年この調査を行い初期値を正確に把握したいとの提案をおこない、実施した。日本は長期予算のよりどころとして2020年、米国は超電導産業の立ち上がり時期としての2010年、欧州は近未来の2000年を重視する傾向がみられる。3極傘下の各企業の識者からのアンケート調査によるデータが合計されて96年度の超電導産業の合計は3 B$(1 B$ = 0.1兆円)と見込まれた。主要実績を占めるのはMRI、NMRによるもので2.2 B$、以下加速器、ITERなどの研究施設0.6 B$、モーター、MAGLEV、磁気分離装置など0.2 B$である。特筆されるのはエレクトロ二クスのデータを提出したのは日本の0.03 B$のみであり、他の2極はプロトタイプの段階である、DODとの契約で数値が公表できないなどの理由でデータがまとまらなかったことである。これらの不備を検討して来年も調査を継続することが同意された。「最近の3極の超電導技術状況」、「欧州科学技術プロジェクト予算」については本報告では割愛する。来年は米国ワシントンで9月に開催される。

(タートル)