SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol. 6, No. 6, Dec. 1997.

12. 地雷検知システム開発を目指す4.5 M$のDARPAプロジェクトを受託
− 米国QM社 −


 QM社(Quantum Magnetics)は、高温超伝導体(HTS)素子及び電子装置の専門分野では米国の最先端を歩んでおり、最近BTi社と組んで超高感度HTS磁気センサーを開発、製造するジョイントベンチャーを創設した話題の会社である。QM社は、この度DARPA(DefenseResearch ProjectsAgency)から450万ドルの地雷検知システム開発の委託研究を受託したと発表した。本プロジェクトは、金属被覆の旧型からプラスチックケース型の最新式まで全世界全種類の地雷を検出できる最先進地雷検知システムの開発を目的としている。本システムは、QRA(4極共鳴分析)即ちNQR(原子4極共鳴)の原理に基いており、帰還RF(ラジオ周波数)信号を受信する際の感度向上と干渉防止の為、HTSセンサーを内蔵させることになるだろう。この委託研究は、DARPA公報により公募されたもので、マサチュセッツ州の米国陸軍軍人システム管理部が研究、事務、管理を担当する予定である。

 4極共鳴分析(QRA)とは、磁気共鳴の1種であるが、核磁気共鳴画像装置(MRI)とは異なり、静磁場を発生させる為のいかなるマグネットも必要としない。QRA装置は、特定の分子中の原子核を短時間励起させる為、低強度のRF電波を放射する。これらの励起された原子核が適合した方位に復帰する時、特有の信号を発生し、この信号はRF受信器により検出され、システムの計算機により解析される。本システムは、爆発物と他物質の磁気的指紋を検出し、結論的に同定することが出来る。

 QM社のP.Czipott研究部長は、同システムについて以下のように語った。「現在我々は、航空会社向けの研究開発で、爆発物検知技術を確立しつつある。航空機バックとは異なり、装置の内部に全ての地雷源を閉じ込めることは出来ない。従って1方向性の配置を考案し、地上から地中に向けて探索周波数に合わせたRFパルスを放射する装置を開発中である。近年、地雷検知には2つの方法が実施されている。すなわち金属探知器と探索犬である。金属探知器の問題点は、地中の榴散弾、食品用金属缶やその他雑多の破片物による誤報の割合が高いことである。一方探索犬を爆発物検知に用いる場合の問題は、犬は定量的な情報を供給しないし、いつ何時犬が風邪を引いて検知能力を失うか判らないことである。また、探索犬の費用は高価である。訓練費を除いても、犬の維持費は35,000ドル/年位かかる。地雷検知については、特別な差別化を実現する大きなチャンスと考えている。」

 QM社のD. Sheet社長は、「我々が、本プロジェクト担当に政府より選ばれたことは、格別に嬉しい。本プロジェクトは、現在我々が完成させつつある幾つかの地雷及び機雷検知システム開発プロジェクトを、良く結び付け補足するものと考えている」とコメントした。

(高麗山)