SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol. 6, No. 6, Dec. 1997.

10. 高磁界磁気シールド用Bi系2223超電導バルクの開発
− 同和鉱業・鉄道総研 −


 同和鉱業(株)超電導開発センターはこのほど、(財)鉄道総合技術研究所と共同で、高磁界磁気シールド用Bi系2223超電導バルクを開発した。

 従来、高磁界のシールドにあたっては、強磁性を示す合金などを敷きつめて用いていたが、これだと目的の磁界をシールドする為には、全体の重量が著しく大きくなってしまうのが難点であったが、今回の技術を適用することにより、重量を大幅に軽減できる可能性がでてきた。

 今回の成果の最も重要なポイントは、Bi系2223超電導バルクを作製するにあたって、焼結を含めた全工程で温度、雰囲気の最適制御を行い、水分と炭素の含有率を著しく低減させたことにある。これにより従来のバルク体に比べて、大幅な特性改善を達成した。

 サイズは最大で88 mm × 88 mm、厚さは1.0 mm 〜 4.0 mm。超電導バルクから20 mm × 1 mm × 0.2 mmの試験片を切り出し、臨界電流を測定したところ、77 K、自己磁界下において20 A以上の臨界電流が流れた。臨界電流密度Jcに換算すると10,000 A/cm2以上になる。磁気シールド特性を評価するにあたり、40 mm × 40 mm × 0.95 mmに切り出した板状試料の表面に垂直に磁場を印加し、ホール素子を表面に沿って2次元的に走査して磁束密度の表面に対する法線方向成分を測定した(77 Kにおいて)。

 今回の改良前後における磁気シールド特性の変化を添付資料に示す。外部磁界50 Gを印加した場合、改良前では30 G以上の侵入磁界があるのに対し、改良後では侵入磁界は試料端部において抑えられ、中心部への侵入がほとんど確認されなかった。つまり、超電導体の磁気シールド効果が大幅に改善されたことを示している。また、厚さが1.87 mmの試料では、外部磁界100 Gまでは、ほぼ理想的な磁気シールド効果を示し、300 Gを印加しても、試料中央部において60 Gまで減衰させることが確認できている。開発担当の同センター・小島正大氏は、「大型化技術と超電導体同士の接合技術を用いれば、高磁界の人体への影響を低減させるための技術として有望であると思う」と期待している。

(戸吹発信基地)



図1 : 改良前 Jc〜3,000 A/cm2



図2 : 改良後 Jc〜10,000 A/cm2