SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol. 6, No. 6, Dec. 1997.

1. 超電導発電機で世界最高出力を達成


 超電導発電関連機器・材料技術研究組合(略称Super-GM)が、かねてより試験を進めていた、70 MW級モデル機が去る11月11日に超電導発電機として世界最高出力の78.7 MWを達成した。これまでの最高出力は、GEの20 MWで今回はこれを大幅に超えるものとなった。

 この研究開発は、Super-GMが通商産業省工業技術院のニューサンシャイン計画の一環として、「超電導電力応用技術」開発プロジェクト(昭和63年度〜平成10年度)を、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から受託している。

 超電導発電機は、現用機に比べ発電効率が1%向上、また長距離送電線に接続した場合系統安定度に寄与し、送電容量を30%増量することなどが期待できるため、次世代の発電機として期待されている。

 超電導発電機は、回転子側の界磁巻線にNbTi超電導導体を使用し、これを液体ヘリウムにより冷却して大電流を通電し、約5 Tの高磁束密度(現用機では約1.5 T)を発生させることにより発電機の高効率、高性能化、小型化を図ることができる。回転子は、磁気飽和を避けるために非磁性材料を使用し、また、外部からの熱侵入を防ぐための真空断熱層と電機子巻線からの非同期磁界の影響を遮断するためのダンパ層を有する多重円筒構造となっている。また、現用機の固定子では、鉄心ティースにより電機子巻線を支持するため渦電流損やヒステリシス損が発生するが、超電導発電機では非磁性で電気絶縁性の高いFRPティースを用いて界磁巻線の発生する強い磁界を有効に利用している。このような構造上の特徴から超電導発電機特有の多くの開発課題がある。

 これらの開発課題に対して、70 MW級モデル機は、次期ステップである200 MW級パイロット機の設計・製作に必要な各要素技術の開発とその検証を行うことを目的としており、開発研究を効率的に行うため、励磁制御(速応性)とその界磁巻線(超電導導体)、ダンパ構造、熱収縮機構などの仕様が異なる3つのモデル機回転子(低速応型A機、低速応型B機、超速応型機)とこれらに共用される固定子の開発を行ってきた。

 モデル機の実証試験では、超電導発電機の運転性能および運転信頼性を、冷凍システムと組み合わせて総合的に検証するとともに200 MW級パイロット機の設計製作に十分なデータの蓄積を図ることを目的として、3つのモデル機回転子について、順次実証試験を行う予定にしている。

 今回発電に成功した低速応型A機は実証試験の一号機でこれまで、@一般基本試験(現用発電機の試験法[JEC114]を準用した同期発電機としての各種定数測定) A固有基本試験(超電導機に固有の仕様と基本的性能確認、検証)を終えた。

 現在 B負荷試験(超電導発電機の負荷運転時において、想定される電力系統との連系対応条件下における運転性能、信頼性の確認及びその運用性の検証)を進めている。

 今後 C過酷試験(系統事故時等を想定した条件下での各種耐力の確認・検証)を進め、超電導発電機の実用性能を検証していく。さらに、低速応型B機、超速応型機の実用性能の検証を進め、超電導発電機の技術確立を図っていく予定である。

試験記録 97.11.11
有効電力
(MW)
無効電力
(MVur)
力率電圧
(kV)
電流
(A)
界磁電流
(A)
回転数
(rpm)
78.723.80.96104,7682,7893,600

今井義博(超電導発電関連機器・材料技術研究組合)



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