SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol. 6, No. 5, Oct. 1997.

5. 1 mを超える線長のIBAD法高温超伝導体線材を開発
− ロスアラモス国立研 −


 高温、高磁界においてBi系より優れた性能を有するY系高温超伝導体(HTS)即ち次世代線材の開発が日米両国で盛んに行われており、最近開発競争は当初のJc性能から線材の長尺化へ移って来ている。この度、ハワイで開催されたISTEC/MRSワークショップにおいて、ロスアラモス国立研究所(LANL)のS. Foltyn博士は、導体巾1 cm、線長113 cmのY系HTS塗付導体を開発したと発表した。従来の最長は70 cmであり、現時点での世界最長記録である。

 LANLの製造法は、基本的にはフジクラが最初に発表したIBAD法(ion-beam assisted deposition)を踏襲しているが、フジクラ法ではテープが加熱ブロック上を摺動するのに対して、LANL法では加熱ローラと連続ループテープ塗付器を使用する点が異なっている。今迄に得られた最高の性能は、5 mm長の部分でJc = 8×105 A/cm2であった。Ic値は、1 cmのテープ長で96 A、12 cm長で70 A、100 cm長で4 Aである。LANLでは、ニッケル合金基盤を使用し、その上に500 nm厚のYSZ層を積層し、さらに1〜2μmのYBCO層を形成している。

 1 cm長の異なるテープでJc値を測定したところ、可成のバラツキが観測された。すなわち、最良部分での8×105 A/cm2から最悪部分での2.9×105 A/cm2までバラツイていた。Foltyn博士は、この変動はサンプリング誤差に因るのではないかと考えている、と云うのはテープは完全に均質ではないし、薄い測定用ブリッジを巾広のテープに溶接しなければならないからである。弱い部分の原因が一旦特定できなければ、1000 Aを優に超えるIc値が期待できると云う。今後の進展が期待される。

(こゆるぎ)