SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol. 6, No. 4, Aug. 1997.

6. HTS線を用いたSMESを実証試験
− ASC社、EUS社 −


 このほど、ASC社(米国)とEUS社(ドイツ)は、共同でHTS線を用いたSMES(エネルギー蓄積装置)を実証試験したと発表した。この実証試験装置は、8kJの電気エネルギーを蓄積する完全に統合化された磁石・冷却システムから成り、かって製造された最も大きなHTSマグネットを内蔵している。本システムは、100 Aまでの電流を扱うことができ、典型的には1秒以内のバックアップ電力を供給するものである。ASC社は、冷却及びマグネットシステムをEUS社へ納入し、EUS社がSMES装置を製作した。本プロジェクトは、完成するまでに1年を要した。本SMES装置は、この後ドイツGelsenkirchen市の縮小送電系統に挿入され、長期テストに入る予定である。

 ASC社の代表者は、「我社は100 kJ SMESの注文を受ける用意があるし、その級のシステムの市場性はあると思う」と語っている。アナリストに依れば、SMESの需要として100 M$/年程度が予想されるという。EUS社のT. Stephanblome専務は、「HTSを用いるSMES装置は、もっと有効な電力の高品質化機器を、という電力業界の要求に対して解決策を与えるものになろう。SMES装置により、脱落や電力の短時間動揺によって引起される機器損傷が防がれ、顧客の節約額は年10 億ドルにのぼると予想される」と語った。

 本誌6月号(vol.6,No.3)に報告されているように、ASC社は最近SI社(Superconductivity Inc.)を取得した。SI社は、低温超伝導線を用いたマイクロSMES装置の製造会社であり、幾つかの1 MJシステムを製作している。比較的小容量の100 kJ SMESシステムの潜在的市場性に関連して、同システムの仕様を尋ねられて、ASC社長のG.Yurekは「100 kJシステムはより大容量のHTS-SMES開発の最初の一歩である。我々が実証した8 kJシステムは実験室的テストには役立つし、100 kJシステムの方には他の目的の為に、多くの電力会社と研究開発グループが関心を示すだろうという予兆がある。そのような水準の蓄積エネルギー・システムに対しても関心があることを聞いて、勇気づけられている」とコメントした。これら100 kJ装置応用に関する仕様は、現在のところ企業秘密である。それにも拘ず、より巨大な長期的市場性はMJ級のSMESシステムの方にあるだろう、とYurek氏は強調していた。

 因みに上記EUS社の紹介をすると、同社の発祥地はドルトムント大の研究所である。事業領域は、エネルギー変換及び蓄積の経済的計画及び運用に関連する電力技術であり、限流器など革新製品も包含している。さらに、公共送電系統と工業的工場における電力の最適使用を目指した中立的な技術リポートを提供している。EUS社の主なパートナーは、電力を供給する会社と産業会社である。

(相模)