SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol. 6, No. 4, Aug. 1997.

10. 高温超伝導線材製造設備規模でASC社に急追態勢
− IGC社 −


 IGC(Intermagnetics General Corp.)は、LTS線材及び低温機器の製造については米国トップの会社として知られ、HTS関係についても従来技術の蓄積に基いて着実な研究開発を進め、ASC社を急追している。このほど、最近増大しているHTS線材需要に対応するため、HTS線材製造設備の新設を発表した。本年2月開催されたDOEの線材ワークショップで発表を行ったIGC社のM.Walker博士によれば、IGC社は現在2万平方フィートのHTS線専門工場を整備中である。設備場所は、ランサム市のIGC本社の近くにあり、数100km/年の製造能力を有し、この夏までに除々にスピードアップしこの水準に上げる計画という。

 IGC社は、同社が供給するHTS線材の量は2001年までには大幅に増大すると予測している。今回の新設は、今後3〜5年の間に増大する線材需要を見越して行ったものである。IGC社の受注契約やトランス、限流器、モータ、発電機、実験室マグネット及び送電ケーブルに対するR&D活動は、現行の製造能力を凌駕しており、今回の拡張は必要不可欠なものである。Walker博士はIGC社の製造能力について、「我々は、月当たり数kmの規模で、Bi-2223線(PIT法)とBi-2212線(表面コート法)を製造している。さらにYBCO被覆導体を模索しているが、未だ短尺の開発段階に留まっている」と語った。

 研究開発の継続的努力により、特性上の大きな進歩が得られており、長尺線のJc向上(図1)とHTSマグネット磁場強度の進歩(図2)はその実例である。Walker博士はこの特性に関して、「IGC社は今後3〜5年間に達成すべき挑戦的目標を設定している。すなわち、長尺線のJc値を1〜2×105A/cm2に引き上げようとするもので、これは最近アルゴンヌ国立研究所及びピッツバーグ大が短尺線で実証した値である。そのような性能向上がなされれば、システム技術者は与えられた応用に対してより少ない線材による設計が可能になろう」と語った。また、線材コストに関して、10〜100ドル/kAmの目標コストを引用した。(DOEが設定した目標に同じ)。

図1 Bi系線材のJc値の進歩

図2 Bi系コイルによる発生磁界の進歩

 IGC社チャートが示すところによればBi-2223線(PIT法)の価格は1990年時点での100,000ドル/kAmから今日の値100〜800ドルに低下しており、2001年までに10〜100ドルに低下するだろう。「学習効果」は、この技術にとってなお本質的であるので、今後製造される導体量が増大することによると同時に上記の性能向上による相乗効果によって大幅なコスト低減が期待できるという。

 最後に、Walker博士は1 MVAトランス開発の現状とHTSトランス用導体の需要量について報告した。1 MVAトランスは、Waukesha Electric Systems、IGC、オークリッジ研究所及びRochester Gas &Electricの共同チームが製作中であり、現在第一期プロジェクトの2/3を完了している。同プロジェクトは30MVAトランスの参照設計に対して行われた実現可能性調査研究に基いている。主な故障及び損失部品は既に開発され、試験を終わっている。1 MVA実証トランス用コイルは完成しており、冷却システムの組立が進行中であり、製作の完了と試験の開始時期は今夏までと予想している。次いで、トランス用HTS導体の市場サイズとコスト予想について報告した。米国における電力トランス需要の年伸び率は、最近2%であるが、或るレポートの予測によれば、30年以前に設置したトランスが撤収される為、今後20年間は2%以上の可能性が高い。HTSトランスが従来型を全て代替しかつトランスコストの1/4が導体によると仮定すると、HTS導体需要だけで年率100Mドルにものぼるだろう。導体コストについていえば、30MVAトランスの25%が導体コストとするとHTS導体分は65, 000ドル以下でなければならず、必要アンペアターン長=5,000 kAmから、導体コストは13ドル/kAmより少ない。望むらくはその半分ないし以下にする必要がある。現状の性能を考慮するとコスト目標は、YBCO(〜80K)1.15ドル/m、Bi-2223(〜50K)3.35ドル/m、Bi-2212(〜30K)2.90ドル/mになろう。

(こゆるぎ)