SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.23, No.6 December, 2014


汎用型HTS磁石システム登場                     _住友電工_


住友電工が開発した冷凍機伝導冷却型超電導マグネットシステム本体は、住友電工製DI-BSCCO線を用い、質量を100 kgと従来システム本体の1/4 まで軽量化し、寸法も奥行0.8 m、幅0.3 m、高さ0.3 m 1/5 まで大幅に小型化されている(1)。また本システムは、永久磁石の検査工程の磁化特性測定等への適用を視野に入れて開発したシステムとのことだが、B-H カーブトレーサ、振動試料型磁力計(VSM)、ハードディスク検査装置等のほか、磁場中熱処理炉等の製造装置など他応用への適用も可能とされている。

高温超電導マグネットの特徴の一つとして速い励減磁速度が挙げられるが、本システムは、従来システムで既に実現済の磁場励減磁速度5 T/30 秒から6 T/30 秒へと約20%増加という更なる高速化を実現している。図2は高速励減磁を繰り返した時のデータだが、励減磁の繰り返しによる交流損失でコイルの温度が上昇しているが、高温超電導の特徴である高い臨界温度による大きな温度マージンによりクエンチすることなく安定な運転が確認できている。この運転パターンに限らず、様々な運転も可能とのことである。図3は、初期冷却を示したものだが、約14時間で冷却が可能となっている。前日の帰宅前にスイッチオンしておけば、翌日朝には稼働できるほどの短時間冷却であり、ユーザーにとっては必要なときだけ冷却すればよく便利ではないだろうか。

本超電導マグネットシステムを応用した検査装置では、例えば、BHカーブトレーサ、振動試料型磁力計(VSM)で製品化が進んでいる。BHカーブトレーサでは、

@ 鉄心の磁気的飽和による異常減衰がなく高保持力磁石の測定が可能

A 渦電流の影響が少なく大型磁石の測定が可能

B パルス磁場における磁気余効の影響がない

などのメリットがあるとのこと(参考ウェブページ1)):。

4は、前述の特徴を図で表したものであり、電磁石で測定した場合には異常減衰により高磁場側で上手く測定できていない。また、パルス磁場で測定した場合には、渦電流の影響によりBHループの角の形状が歪んでいる。一方、本超電導マグネットを使った場合には、高磁場まで精度良くBHループが得られている。

振動試料型磁力計(VSM)では、

@従来比20倍の高速測定

A例えば0.5 mm角の小試料を高精度に測定可能

B磁界発生部の小型化、

などの特徴が挙げられている(参考ウェブページ2))。図5は、VSMによる測定の一例であるが、鉛筆の先ほどの小さな試料でもきれいなBHループが測定されている。測定時間は6分程度と従来と比べて格段に速く精度の良い測定が出来るようだ。

本マグネットシステムを開発してきた同社超電導製品開発部応用開発部長加藤武志氏は、「DI-BSCCOの産業応用製品のオナーとして、まずは小型のマグネットでユーザーの方々に広く使って頂けるようにすること、また本製品を契機として今後の各種製品へと繋がるようにしていきたい」とコメントしている。 (ゴリさん)

 

参考ウェブページ

1) http://www.j- ndk.co.jp/product/jikisokutei/bh_curve_tracer.html#sub_03

2) http://www.toeikogyo.co.jp/products/sei-01/vsm-5hsc.html

 

 

 

型名

DI-BSCCO-MS 6T-70

磁場強度

±6 T

室温ボア径

Φ70 mm

励減磁速度

6 T/30 sec.

運転電流

250 A

インダクタンス

1 H

磁場均一度

0.3%/10 mmDSV

寸法

0.8 m×0.3 m×0.3 m

質量

100kg