SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.23, No.4 August, 2014


長さ1 kmAmpaCity超電導ケーブル運転状況               _住友電工_


 ドイツ・エッセン市では、1 km級の超電導ケーブルが10 kVの系統に接続され、実際に運転されている。この4月に運開し、既に約4ヶ月が経過しているが、問題なく送電されている。現地を訪問された方からの情報や、Webサイト (http://www.rwe.com/web/cms/de/1852946/rwe-deutschland-ag/ energiewende/intelligente-netze/ampacity/)にでている資料をもとに、プロジェクトの概要を紹介する。

 Essen地区では、従来の大規模発電所から高電圧(400 kV)経由で送電され、降圧し電力が配電されてきたが、原子力発電が廃止の方向に向かい、小規模分散型の太陽光、風力発電が低電圧系統に接続されてきたこともあり、低電圧系統の容量アップが必要な個所が出てきている。また、110 kV/10 kVの変電所を市内に増設する代わりに、10 kVの超電導ケーブルで、市内に導入すれば、@布設スペースの削減、A建設工事費用の低減、B変電所数低減、などのメリットがあるとのことである。

上記コンセプトを示すため、このプロジェクトでは、実際にHerkules変電所から、Dellbrügge変電所までの1 km区間に超電導ケーブルを布設し、超電導ケーブルの実系統送電をデモンストレーションしている。ケーブルの定格は、電圧10 kV、電流2310 A、容量40 MVAであり、図1に示した三相同軸型の超電導ケーブルを採用している。

 

 

 

1 三相同軸ケーブル構造。

 

開発体制は、RWE (ドイツを中心とし電力・ガス会社)が系統を提供し、運転、保守を担当、NEXANS (ケーブルメーカ)が、超電導ケーブルのシステム設計、建設を担当、カールスルーエ工科大学は超電導材料や絶縁材料の解析を担当した。総予算13 M€、ドイツ政府から補助がでているとのことである。

プロジェクトは2011年にスタートし、設計、開発、タイプテスト(30 m)を経て、20139月から現地工事を開始し、12月には完工し冷却をスタートした。その後、Commissioningテストを経て、4月に実系統での運転を開始し、現在に至っている。図2に超電導ケーブルが布設されている経路を示す。

ケーブルは、全長約1 km、中間地点にジョイントを設けている。公道に深さ約2 mのトレンチを掘り、管路を埋め、ケーブルを管路に引きこんだとのことで、布設後は、トレンチを埋め、アスファルトで覆っている。このため、図3に示したようにアスファルトの継ぎ目から、布設ルートがトレースできる。

 

2 AmpaCity 超電導ケーブル(1 km)の経路。

 

 

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3 超電導ケーブル布設後の舗装跡。

4 超電導ケーブル立ち上り部と端末。

 

事故電流対策のため、イットリウム系線材を使った抵抗限流型の限流器を超電導ケーブルとシリーズに接続している。この限流器と超電導ケーブルの端末(片端)、冷却システムは、Herkules変電所に設置されている(4参照)。冷却システムは、冷凍機を使わない液体窒素消費型タイプ。液体窒素の貯液用の50 m3タンクが設置されており、2~3週間に1回、20 ton(約半分)の液体窒素を補給して運転している。

現状の負荷はそれほど大きくないそうだが、このまま運転を継続し、システムの運転性、安定性を検証していくとのことである。また、現状の契約では、20162月にプロジェクトは終了の予定であるが、運転を長く続けるべくプロジェクトの延長を交渉するようである。実系統での長期運転の成功を期待したい。(TMS)