SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.23, No.4 August, 2014


高温超電導ケーブル実証プロジェクト、次のステップへ   _SUPERCOM事務局_


 弊誌SUPERCOMでは、独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構の委託により進められていた「高温超電導ケーブル実証プロジェクト」(東京電力−住友電工−前川製作所)について、随時取材を実施してきた。本プロジェクトでは、平成241029日〜平成251225日の期間にわたり、東京電力旭変電所で超電導ケーブルシステムを実系統に接続し、ケーブル性能・信頼性・安定性の評価を実施している。今回、前回に引き続き東京電力にご協力を頂き、プロジェクトの成果と課題、終了後の今後の展望について取材させていただいた。

1は系統連系期間中の約14ヶ月間にわたる運転状況の推移、図2は運転実績をまとめたものである。途中、臨界電流測定等の定期検査のために、2回の計画的な系統切り離しを実施しているが、この期間を除く系統連系運転の実績日数は400日程度であり、送電停止を伴うような重大故障はなく、安定した送電を維持できたとのことである。系統切り替え等に伴う負荷変動に対しても、安定した運転制御が維持され、主要指標である冷媒流量、冷媒圧力は40 L/min0.200.25 MPaGの動作範囲に維持されていることがわかる。冷媒温度は、運用開始当初、制御中心値である69±1 Kの範囲で制御していたが、冷凍機冷却能力の温度依存性や、長距離線路適用時の温度上昇に対する信頼性検証のため、最高で79±1 Kの範囲まで変更したとのことである。これらを含め、PJの成果については本誌4月号(Vol. 127)に掲載されている。

テキスト ボックス: 図1 系統連系期間中の運転状況推移。

テキスト ボックス: 図2 系統連系期間中の運転実績。

 

 

 

 

 

 

今回のPJから明らかになった課題としては、1つ目に冷却システムの効率改善があり、現状のシステムでは、消費電力に対する除去熱量の割合を示すCOPが、運転前の検証試験で0.05程度であったものが、冷凍機の冷却能力に経時的に低下が見られ、0.04程度に下がってしまったとのことである。2つ目は侵入熱の低減で、PJ期間中にケーブル部や冷凍機において経時的な真空度低減が見られ、徐々に侵入熱の増加が確認されている。3つ目に、事故時の安全性検証があり、今回、幸いにもトラブル無く実系統運転を終了することができたが、短絡事故や外傷事故等の大きなトラブルの影響を検証する必要があるとのことであった。そのため、上記の課題や実用化に向けさらなる技術向上を図るため、今回のPJが終了した平成262月以降、残存性能検証等の継続研究を経て、同7月よりNEDOの助成事業として後継PJ「次世代送電システムの安全性・信頼性に係る実証研究」が立ち上がっている。研究期間については、中間評価として平成283月までの研究成果が認められると、292月までの延伸が予定されている。

後継PJの実施内容は、主に今回の実証試験で確認された課題を反映したものであり、1つ目にCOP = 0.1を目指した高効率型ブレイトン冷凍機の開発がある。これまでの開発の継続として、既に、前川製作所守谷工場の性能試験にてCOP = 0.1の目標値達成を確認しており、今後、26年度中に旭変電所に移設工事を行い、27年度以降に系統接続運転による長期運転の性能確認を実施する予定とのことである。2つ目に超電導ケーブルの侵入熱低減技術があり、断熱管の構造見直しや経時的な真空度維持対策の検討、また、今回の実証試験で確認されたケーブル断熱管の侵入熱2.5 W/m程度に対し、27年度までに1.8 W/mまで低減させる目標を検討しているとのことであった。3つ目に安全性評価検証があり、超電導ケーブルの不測の事態に生じる現象と対応を検討する必要があることから、試験モデルを構築し、短絡・地絡故障や外傷事故時を模擬させることで、事故時の挙動や外部環境への影響についての検証が予定されている。

 今回の実証試験では、予定されていた期間に対し安定した実系統運転を確認することができ、実用化に向け信頼性という面で大きく前進したといえる。現在、引き続き後継PJが立ち上がり、システムのさらなる高効率化や安全性に関する検証も進行中であることから、事務局として、引き続きプロジェクトの動向に注目していきたい。(レオナルド・ダ・ビィンチ)