SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.23, No.3 June, 2014


ITER向けトロイダル磁場コイル4基、および同コイルの構造物6体を受注!  _東芝_


 東芝は、フランス サン・ポール・レ・デュランス市のカダラッシュで建設中の国際熱核融合実験炉(以下、ITER)向けトロイダル磁場(TF)コイルの製作を独立行政法人日本原子力研究開発機構(以下、JAEA)から受注した。ITERは、18基のTFコイルで構成されているが、今回東芝が受注したのは、TFコイル4基と同コイルの収納容器6体である。トロイダル磁場コイルは、核融合反応に必要な高温のプラズマを閉じ込めるための磁場を発生させる超伝導コイルである。 

 ITERは、将来のエネルギー源の一つとして期待される核融合エネルギーの科学的、技術的な実現可能性を実証することを目的に、日本、欧州、米国、ロシア、中国、韓国、インドの7極が参画し、建設が進められている熱核融合実験炉である。熱核融合発電は、燃料の重水素と三重水素を1°C以上のプラズマ状態に保ち、核融合反応させることで発生した熱を利用して発電する。燃料資源が自然界に多く存在するため、長期にわたって安定的に燃料が確保できる次世代の発電システムとして期待されている。2011年最終設計時に示されたITER装置は、公称核融合出力500 MW、公称最大プラズマ電流15 MA、公称誘導パルス時間400秒以上の大型核融合発電システムである[1]ITER装置の外観図を図1に示す。ITERマグネットシステムはTFコイル、ポロイダル磁場(PF)コイル、セントラルソレノイド(CS)コイル、コレクション(CC)コイルの4種類のコイルから構成されている[1]。うち、TFコイル、PFコイル、CSコイルの主要パラメータを表1に示す。

東芝が受注したTFコイルは、図2に示すように超電導コイルと電磁力支持のためのコイル構造物(前述の収納容器)から構成されている。最大運転電流68 kAの超電導導体は溝付きのステンレス鋼板でできたラジアルプレート(RP:図3に構成図を示す。10セグメント構成で、各セグメント間は溶接で接合されている)とカバープレート(CP)の間に挿入され固定される。このような形状のD型ダブルパンケーキ(DP)コイルを7(レギュラーDPコイル:5個、サイドDPコイル:2)を積層して、ワインディングパック(WP)形成する。このWPをコイル構造物に収めて、TFコイルは構成されている。今回受注したTFコイルは2017年から順次納入する予定で、東芝京浜事業所とIHI・東芝パワーシステム株式会社で分担して製作する。

東芝はこれまで、JAEAの臨界プラズマ試験装置JT-60や大学共同利用法人自然科学研究機構の核融合科学研究所向けの大型コイルおよび設備電源を製作し、また今年3月には、JAEA那珂核融合研究所が計画するJT-60の後継機JT-60SA向けの真空容器セクターをすべて納入するなど研究機関や大学向け試験装置の設計および装置の製作を通して、核融合技術の研究開発に参画している。今後も、東芝の技術を生かし、最先端のエネルギー技術の研究開発に貢献していくとのことである。(RETI)

参考文献[1] 一般社団法人 未踏科学技術協会 超伝導科学技術研究会 核融合原型炉用超伝導コイル開発に関する産業界の技術調査・調査委員会編集、“核融合原型炉用超伝導コイル開発に関する産業界の技術調査 調査報告書”P19、平成261

テキスト ボックス: 図1 ITER装置外観図

 

1 ITERマグネットシステムの主要パラメータ[1]

 

 

 

テキスト ボックス: 図2 TFコイルの構成

 

 

テキスト ボックス: 図3 TFコイルのラジアルプレート(RP)の構成