SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.23, No.2 April, 2014

 

 


次世代フライホイール向け超電導マグネットを開発

〜メガソーラー等との連携により、効率的な電力エネルギーの貯蔵が可能に〜 _ 鉄道総研、古河電工 _

  鉄道総研と古河電工は、イットリウム系の第 2 世代高温超電導線材で大型フライホイール用の高温超電導マグネットの開発に成功したと、 3 月 10 日に発表した。この 開発は、新エネルギー・産業技術総合開発機構の「安全・低コスト大規模蓄電システム技術開発」プロジェクトの中で実施されたもので、 太陽光発電等の再生可能エネルギーの余剰電力を蓄電するシステムの開発を目的としている。

 開発には、鉄道総研と古河電工の他に、 クボテック、ミラプロ、山梨県企業局が共同で参加しており、安全と低コストを両立した次世代フライホイール蓄電システムの完成を目指している。

 鉄道総研と古河電工は、イットリウム系の第 2 世代高温超電導線材で大型フライホイール用の高温超電導マグネットの開発に成功したと、 3 月 10 日に発表した。この 開発は、新エネルギー・産業技術総合開発機構の「安全・低コスト大規模蓄電システム技術開発」プロジェクトの中で実施されたもので、 太陽光発電等の再生可能エネルギーの余剰電力を蓄電するシステムの開発を目的としている。開発には、鉄道総研と古河電工の他に、 クボテック、ミラプロ、山梨県企業局が共同で参加しており、安全と低コストを両立した次世代フライホイール蓄電システムの完成を目指している。 本蓄電システムは、鉄道総研が考案した超電導バルク体と超電導マグネットを組合せた超電導磁気軸受方式を適用したことが大きな特徴である。この方式の開発は 平成 24 年度まで国土交通省の国庫補助金を受けて鉄道総研が取り組んできたもので、既にビスマス高温超電導コイルと超電導バルク体の組合せによる超電導磁気軸受を製作し、 6 トンを超える荷重支持の実証に成功している ( http://www.rtri.or.jp/rd/division/rd79/rd7920/rd79200107.html ) 。

今回の NEDO のプロジェクトでは、より高い冷却温度で運用可能な イットリウムを用いた第二世代高温超電導線をコイルに適用し、 実用化に向けた開発を進めてきた。

 フライホイール用の磁気軸受は、高速で回転する円盤 ( 回転体 ) を磁力によって浮上させ、非接触とすることで軸受の摩擦損失をゼロとすることが可能である。高温超電導体の発見以来、日本、米国、ドイツなどの世界各国で開発が進められていた超電導磁気軸受は、バルク超電導体と永久磁石を組合せる磁気軸受方式が主流であったが、この方式では片側に永久磁石を用いる以上、軸受の載荷力密度 ( 浮上力を超電導体の表面積で除した値 ) は永久磁石の性能で決まってしまい、大気圧程度の 100 kN/m 2 にとどまる制約があった。そこで鉄道総研では永久磁石の代わりに超電導コイルを用い、発生磁場を増大する構成を考案した。こうすると電磁力は磁場の自乗に比例して大きくできるので載荷力密度を容易に増大することができ、大型かつ大重量の回転体を支えることが可能となる。さらに機械的な軸受では、メンテナンスのために定期的に交換が必要であったものを、半永久的に使用することが可能となり、フライホイールの経済性を高めることができる。

 発表では超電導マグネットは内径 120 mm 、外径 260 mm のダブル・パンケーキコイルで、スーパーパワー社が製造したイットリウムを用いた第二世代高温超電導線材と、中部電力が開発した「よろい」コイル技術 ( コイル内の超電導線材に作用する電磁力を超電導線材に接するコイル側板で支える方法 ) を用いて製作されている。さらに、コイルの通電実験の成果も記載しており、小型冷凍機を用いて伝導冷却したマグネットに、運転電流である 110 A での通電を行い、超電導バルク体との組合せ試験で反磁性効果による 2 トンを超える所期の浮上力が確認され、マグネットとして強度的にも問題はなかったと報告されている。開発に携わった古河電工の向山晋一によると、「今回開発した超電導マグネットは、フライホイールという製品の一部として、系統に実際につなぐフライホイールに使われるものである。そのためコイルについては、短期間で完成度の高い開発と安定した性能が求められ、実績のあるスーパーパワー社の第 2 世代線材と中部電力殿の「よろい」コイル技術を用いることで、開発を進めることにした。古河としても高温超電導として製品化をターゲットとした初めてのマグネット開発であり、今回の成功を受けてマグネット事業の将来性に期待している。」とコメントしている。

 今後の予定としては、平成 26 年度にクボテックが回転体の製作を、ミラプロが真空容器、鉄道総研が電動・発電機を準備し、古河電工も今回開発したパンケーキコイルを複数製作し積層した構成を 1 マグネットとして 4 トンの浮上力の超電導磁気軸受にしてフライホイールを完成させる予定。その後、 平成 27 年に山梨県甲府市の米倉山 ( こめくらやま ) 太陽光発電所 において、山梨県が新たに建設する 1,000 kW のメガソーラーとの連系試験を開始し、「安全性の実証」等、将来の実用化に向けた基礎データの取得を行う計画である。 ( はずみ車 )

 

図 1 試作した高温超電導マグネットと超電導バルク体

図 2 次世代フライホイール蓄電システム ( イメージ図 )