SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.23, No.2 April, 2014

 

 


RE 系バルクを利用した磁場に強いコンパクトな電流リードの現状 _新日鉄住金_


 QMGR 電流リードは、磁場中での J c - B に優れた新日鉄住金製 RE 系 (RE : Y または希土類元素 ) 高温超電導バルク ( 商標 QMGR) を用いていることに加えて、線材のような金属基板がないため、磁場に強くコンパクトな電流リードとなっている。さらに、図 1 に示すように、曲げ試験や引張試験など様々な機械試験で耐久性が実証されている。このような優れた特長のため、 ジャパンスーパーコンダクタテクノロジー ( 株 )(JASTEC 社 ) 殿の無冷媒型マグネットや ( 株 ) 日立製作所殿製の超電導ウィグラーにも搭載され、実用材料としての使用実績を蓄積している。

 電流リードは超電導コイル利用機器の冷却効率を左右するキー部品であり、 Bi 系に比べて J c - B 特性の優れた RE 系バルクは電流リードに理想的な材料である。電流リード用途では、侵入熱を抑制するため低熱伝導性が要求されるため、新日鉄住金では RE 系バルクの中でも熱伝導率が低い Dy 系バルクを用いた QMG R 電流リードを開発している。磁場に強い RE 系バルク電流リードは現在までに多くの使用実績を蓄積している。例えばJASTEC( 株 ) 殿の無冷媒型マグネットは磁場に強い QMG R 電流リードを搭載しているため、図 2 のようにコンパクトで魅力的なマグネットになっている。これらのマグネットは大学や研究機関の実験用マグネットや工場での磁場中製造装置などに用いられている。さらに、 QMG R 電流リードは、図 3 のように九州シンクロトロン光研究センターにある ( 株 ) 日立製作所殿製の超電導ウィグラーにも搭載されている。この超電導ウィグラーは装置内部での磁場勾配が大きい上に狭く込み入っているので、外部磁場に強く設置に自由度のある QMG R 電流リードが好適な使用例と言える。

 また、マグネット用途以外にも、東北大学金属材料研究所強磁場超伝導材料研究センターでは、 200 A 級や 1500 A 級の臨界電流測定プローブに Bi 系に比べ磁場に強い QMG R 電流リードが使用され、液体ヘリウムの節約と実験時間の確保に役立っている。 1500 A 級は、主に HTS 線材の 4 K 、 27 T までの低温強磁場の臨界電流測定に活躍している。さらに東北大では、今後 25 T あるいは 30 T 超電導マグネットの R&D として QMG R 電流リードを組込んだ 3000 A 級プローブを使ってコイル評価を行うことも計画している。他にも、 NIMS や KEK 等の公的研究機関や大学での実験用マグネットにも QMG R 電流リードは使用されている。もしかすると読者の研究室にある超電導マグネットにも QMG R 電流リードが採用されているかもしれない。(QMG 太郎 )

図 1 QMG R 電流リードの (a) 外観写真と耐久性試験の様子: (b) 曲げ試験、 (c) 引張試験

 

図 2 QMGR 電流リードの使用実績例 − JASTEC 社殿の無冷媒型マグネット−

 

図 3 QMGR 電流リードの使用実績例 2 −日立製作所殿製の超電導ウィグラー

( 九州シンクロトロン光研究センター殿で稼働中 )