SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.24, No.6 Decemberr, 2013


トルク密度を飛躍的に改善! − 20 kW 級高温超伝導誘導同期回転機の体格を 70% 低減成功       _ 京都大学、イムラ材研、アイシン精機、産総研、新潟大学 _

 


  ( 国 ) 京都大学・ ( 株 ) イムラ材料開発研究所・アイシン精機 ( 株 ) ・ ( 独 ) 産業技術総合研究所・ ( 国 ) 新潟大学の産学連携研究開発グループは、 ( 独 ) 科学技術振興機構 (JST) の委託事業「戦略的創造研究推進事業 先端的低炭素化技術開発 (ALCA) 」 (2012 年 10 月〜 ) として輸送機器用高温超伝導誘導同期回転機システムの研究開発を推進している。同グループは、 ( 独 ) 新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO) の委託事業「省エネルギー革新技術開発事業/挑戦研究」 (2009 年 10 月〜 2011 年 2 月 ) として開発した 20 kW 級プロトタイプ機について、設計通りの出力特性を達成し、開発技術の高さを証明してきた [1] 。
  ALCA プロジェクトでは、これまで蓄積してきた回転機技術や冷却系技術にさらなる見直しを図り、磁気体積 ( 電磁エネルギー変換を行う鉄心コア部の体積 ) を 30% にする研究開発に挑戦していた。図 1 には、試作した回転子ならびに固定子 (3 相 4 極 ) の外観写真を示す。同図の磁気体積は、同等の出力を有する NEDO プロ機の約 30% であり、回転子巻線にはビスマス系高温超伝導テープ材を、また固定子巻線には既存の銅巻線をそれぞれ使用している。上記回転機を断熱クライオスタット内に設置し、図 2 のような回転試験システムを完成した。
  図 3 には、液体窒素中 (77 K) において実施した負荷試験結果の一例を示す。はじめに、無負荷状態で試作機を同期回転数 (1800 rpm) に引き入れ、その後徐々に負荷を印加してトルク特性を評価した。同図から 明らかなように、試作機は準同期回転数において 20 kW を見事に実現しており、即ち NEDO 機に比較して 3.3 倍のトルク密度改善に成功したことが明らかになった。さらに、上記出力を超えて負荷を印加したところ、 26.8 kW のすべり回転にも成功した。本結果は、高温超伝導誘導同期回転子の非線形抵抗特性 ( 磁束フロー特性 ) を積極的に利用することにより、従来型 ( 常伝導 ) 回転機と同様に過負荷耐量や短時間定格を設定可能であることを示唆している。上記一連の研究開発成果は、 2013 年度秋季低温工学・超電導学会 ( ウィンクあいち、 2013 年 12 月 4~6 日 ) において紹介された。
  プロジェクトリーダーの京都大学・中村武恒准教授によると、「我々は、ダイレクトドライブ型の輸送機器用次世代高温超伝導回転機システムを研究開発しており、設置スペースの制約から、トルク密度や出力密度の改善が大きな課題であった。本試作ならびに試験の成功によって、高トルク密度回転機開発技術が大きく前進したと考えている。今後は、トルク密度や出力密度のさらなる向上に挑戦するとともに、冷却系まで含めたシステム全体の検討を進めていきたい」と話 している。 ( 京大 TN)

 

      

 

図 1 20 kW 級高温超伝導誘導同期回転機本体の写真。

( 左 ) ビスマス系高温超伝導回転子、 ( 右 ) 銅固定子 (3 相 4 極 )

 

 

        図 2 冷却クライオスタットの外観写真

 

 

 

 

                    図 3 温度 77 K における負荷試験結果の一例

 

 

参考文献  

[1] 中村武恒 , 応用物理 , vol. 82, no. 7 (2013.07) pp. 579-582