SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.24, No.5 October, 2013


高温超電導ケーブル実証プロジェクト、無事に終盤へ

_東京電力、住友電工、前川製作所_

 


 SUPERCOM 事務局では 2010 年以来、独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構の委託により進められている「高温超電導ケーブル実証プロジェクト」 ( 東京電力−住友電工−前川製作所 ) の取材を続け、 7 回にわたって経過を紹介してきた。昨年 10 月 29 日に東京電力旭変電所において実系統に接続されて以来、順調に運転されている超電導ケーブルシステムの通電試験期間は、本年末で一旦終了すると いうことである。
  とにかく記録的な暑さとなった今夏を事故なく乗り切ったことは大きな成果であり、今後の冷却システムの機能や運転方法の改善に向けての重要なデータが残されたことは確かであろう。図 1 は 9 月 1 日の運転状況である。この日は晴れで、東京都心の最低気温が 28.8°C 、最高気温が 35.7°C と熱帯夜&猛暑日であった。高温による電力需要の増加によってこの夏は通電量が 1000 A を超える日がしばしばあったが、この日も図の通り最大 1000 A に達している。但し、超電導ケーブルの規格が 3000 A であるため電流の点では大きな余裕があった。注目すべきは液体窒素の温度である。実系統接続以来、液体窒素の温度を 6 台ある冷凍機の運転台数を変えることによって様々に変えながら、冷却システムの試験が行われてきた。接続当初は 70 K 前後で液体窒素の温度が制御されてきたが、この 9 月 1 日にはケーブル入口が約 76 K 、同出口が約 79 K で制御されている。なお、液体窒素の沸点は 1 気圧下では 77 K であるが、このシステムでは加圧状態にあるため沸騰は起きていない。 東京電力の本庄昇一氏によれば「液体窒素の温度を高くすると冷凍機の効率が少し高くなることもあり、 この夏には意図的に温度を上げながら運転し、 冷却システムのデータを収集した。通電電流に余裕があり、さらにケーブルに使われている線材が Bi2223( T c ~112 K) なので、温度が高くなっても電流容量の低下の割合が小さく、安定した運転が継続できた。」とのことである。

 これから涼しくなり、電力需要も夏期よりは低下するので、この試験はこのまま順調に終了するものと思われ、また、そうなることを願っている。その後には、長期運転を経たシステム各部の性能などの変化が調べられる予定である。 (SUPERCOM 事務局補佐員 )

 

    図 1 9 月 1 日の運転状況 ( 住友電工、 高温超電導ケーブル実証プロジェクトホームページ http://www.sei.co.jp/super/cable/jissho.html より )