SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.24, No.5 October, 2013


官能基装飾磁性活性炭と磁気分離による水銀の除去に成功

       _首都大学_


 首都大学電気電子工学専攻の三浦大介准教授らの研究グループは独自に作製した磁性活性炭に水銀との結合特性に優れる SH 基 ( チオール ) と酸性官能基を表面に装飾した磁性吸着剤を開発し、これと超伝導マグネットを使った高勾配磁気分離により、水銀を高速に除去するシステムの開発に成功した。この成果は 23rd Magnet Technology Conference ( 7/14-19, ボストン ) で発表された。

Fig. 1 Typical TEM image of MAC with nanosize magnetite.

 水銀は小規模な金採掘や農薬、ランプ等に使用されるほか、石炭火力発電の排ガス中にも多く含まれ、大気循環により国際的な汚染が深刻化している。 このようななか今年 10 月に国際的な水銀使用規制に関する水俣条約が締結されたことは朗報といえよう。水銀を含む廃水処理に関しては様々な取り組みななされているが、より効率的な除去法の開発が望まれている。本研究グループは表面積の大きい粉末状の活性炭にナノサイズのマグネタイトを均一に生成させる手法を既に開発していたが、今回はこれに水銀との結合に優れた官能基を装飾したことがポイントとなる。
  吸着剤は複数作製した。ベースになるのは Fig. 1 に示す、ヤシ殻活性炭を硝酸鉄へ含浸させ、高温のガス賦活処理によりメソ孔とナノマグネタイトを内部に生成させた磁性活性炭 (MAC = Magnetic Activated Carbon) である。このメソ孔化活性炭を使用し、高温、高濃度での酸化処理により表面酸性官能基を大幅に増加させたのが酸化磁性活性炭 (Ox-MAC = Oxidized Magnetic Activated Carbon) で、さらに有機化学的方法により Ox-MAC に存在するカルボキシル基をハロゲン化してからチオール化することで、活性炭表面に水銀を選択的に吸着可能なチオール基を導入した SH 基導入磁性活性炭 (SH-MAC = SH Radical- Decorated Magnetic Activated Carbon) である。
  濃度 1~100 mg/L のメチル水銀溶液に各種吸着剤加えて、吸着実験を行なった結果を Fig. 2 に示す。 MAC は高濃度において 44.8 mg/g の水銀を吸着し、 Ox-MAC 及び SH-MAC は低濃度において 95% に迫 る水銀浄化率を示し、高濃度においてもそれぞれ 33.7 mg/g 、 37.6 mg/g の水銀を吸着した。また、これらの吸着剤の吸着特性は化学吸着特有のラングミュラ―吸着等温線にのった。 Fig. 3 は流速 1 m/s における MAC の高勾配磁気分離実験 ( 磁性線フィルターは SUS430, 100 m m) の結果である。低磁界 1~2 T において 100% の粒子捕獲が観測されている。磁化率を変化させた粒子で実験を行ったところ 18 emu/g の磁化があれば流速 1 m/s の高速で磁気分離できることがわかった。またこれはシミュレーション結果に一致する。

三浦大介准教授によれば 「一連の実験の結果、磁性吸着剤と磁気分離による水環境における水銀除去の可能性が示された。今後は実用化に向けた開発にも着手していきたい」とのことである。( フォールライン )        

     Fig. 2 The removal rate of methylmercury in the various concentration solution for all of the adsorbents.

 

 

             Fig. 3 Leak rate of MAC3 with a magnetization of 18 emu/g.