SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.23, No.4 August, 2013


20 kW 級高温超伝導誘導同期回転機の全負荷試験成功

−輸送機器用駆動システム実現に向けてはずみ

_ 京都大学,イムラ材料開発研究所,アイシン精機 _

 



( 国 ) 京都大学、 ( 株 ) イムラ材料開発研究所、アイシン精機 ( 株 ) 、 ( 国 ) 新潟大学、 ( 独 ) 産業技術総合研究所の研究グループは、科学技術振興機構 (JST) の委託事業 (H24 年度戦略的創造研究推進事業 先端的低炭素化技術開発 (ALCA) 「低炭素社会を支える輸送機器用超伝導回転機システム」 ) として、輸送機器応用を目指した高温超伝導誘導同期回転機システムの研究開発を実施している (1)(2) 。本プロジェクトの大きな目標の一つとして、 20 kW 級プロトタイプ機 (H22 年度の NEDO プロジェクトとして開発した試作機を改造 ) の設計・試作技術について、その妥当性検証が挙げられていた。この度、設計通りの全負荷試験に成功し、同グループの一連の研究開発技術が実証された。

図 1 には、 20 kW 級プロトタイプ機の外観写真を示す。研究グループでは、これまで同機の電磁界解析/非線形等価回路解析モデルを構築し、部分負荷試験結果と良く一致することを確認していた。ただし、設計・試作技術の妥当性を実証するためには全負荷試験を実施する必要があり、そのための試作機の改造と試験設備の整備が求められていた。本年度、上記準備が整ったことから全負荷試験にトライし、無事出力 20 kW を得ることに成功した。図 2 には、運転温度 77 K における負荷試験結果の一例を示す。まず、プロトタイプ機を無負荷状態で同期回転数 (1575 rpm) に引き入れ、その後徐々に負荷を印加して定常出力特性を測定した。同図に示すように、プロト機は準同期状態 ( 微小なすべりを伴う回転状態 ) で最大出力 20 kW に到達している。なお、 20 kW を超えたあたりで若干のすべり回転モードに移行し、その後脱調して停止した。同グループでは,上記成果を 電気学会 超電導応用電力機器研究会 (2013 年 9 月 24, 25 日、横浜 ) で報告する予定である [3] 。

研究責任者の中村武恒准教授 ( 京都大学 ) は、「プロトタイプ機について、 20 kW の全負荷試験に成功することはプロジェクトの成否を左右する重要な目標であった。予定通りのデータを取得でき安心している。本成果により、回転機設計・試作技術、低熱侵入回転シャフト開発技術、小型低熱侵入クライオスタット開発技術など、様々に蓄積した技術やノウハウの妥当性を実証することができ、また課題を明確化できた。特に、各種試作の成功は企業メンバーの全面的な協力の賜物であり、深く感謝している。現在は、今回の成果をもとにより完成度の高いモデル機を試作中であり、実用化を目指してさらに前進していきたい。」と話している。       ( 京大 TN)

 

参考文献

1. 中村武恒:「輸送機器応用を目指した高効率超伝導回転機システムへの挑戦」,化学工業, Vol. 64, No.6, pp. 24-28 (2013)

2. 中村武恒:「輸送機器用高温超伝導誘導同期モータの研究開発 ? マクロ非線形現象と高機能回転機システム - 」,応用物理, Vol.82, No.7, pp. 579-582 (2013)

3. 中村武恒,他:「 20 kW 級高温超伝導誘導同期回転機の全負荷特性」,電気学会超伝導応用電力機器研究会,東京電力技術開発研究所,横浜 (2013 年 9 月 24, 25 日 )