SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.22, No.3 Junel, 2013


 

超電導自動車第 3 号車登場!              _住友電気工業(株)_

 


 近年急速に進展している自動車の電動化の流れを、車両のサイズで大別してみると、乗用車に関してはハイブリッド自動車( HEV )が普及期を迎えており、電気自動車( EV )も量産車が市場に投入され実用化の段階に入った。一方、大型商用車に関してみると、稼働率の高い車両の電動化による省エネに対する要請が高まりつつあり、特に公共交通機関としての電動バスの実用化が先行すると予想される。すでに電動バスの実証試験が 2010 年より各地で開始されている。
  また、トラック分野でも比較的近距離の物流を担う、宅配便の車両、郵便配送用車両、コンビニ配送用車両等から電動化が進むと見られる。
  大型商用車の電動化における課題として、車体重量に加えて積載重量が大きく、搭載可能な電池容量に比べて駆動に必要なエネルギーが大きいため、航続距離が伸ばせないことが挙げられる。電池エネルギー密度の向上が鋭意研究開発されているところであるが、一方で消費エネルギーの削減も有力な解決策であり、特に効率の良いモータの採用が有効である。大型車の電動化実証試験車両等において用いられている永久磁石式同期モータ (PMSM) や誘導モータ( IM )は技術的にほぼ確立されたものであり、大幅な効率向上の見通しは示されておらず、革新的な高効率モータの開発が求められている。
  超電導モータは銅損がなく、自動車用モータの場合、低回転数から高回転数まで、また車両が一定速度で巡航するような低トルクから加速時の高トルクまで、モータの駆動範囲が広い。通常のモータでは高トルク出力時に銅損が増大し、効率が低下するが、超電導モータは広範囲で高効率である。
  住友電工では高温超電導材料のポテンシャル検証を目標に、 2007 年に世界に先駆けて超電導電気自動車の 走行実験を行った。その 2 号車では住友電工社内での累積走行距離は、 800km におよぶ距離となっている。いずれも DC モータであり、ビスマス系コイルによる界磁コイルを用い、固定界磁コアはクロ−ポール型である。また超電導モータは単純な液体窒素浸漬式であった。
  今回の第 3 号車は、極低温用冷凍機と一体化した超電導モータを開発し車両に搭載したものであり、新たに車載冷却システムの実証を目指している。図 1 は超電導モータの外観であり、図 2 は走行実験中の第 3 号車である。車両の走行評価結果は、最大トルク( 1,540 rpm )は 136 Nm 、最高出力( 2,200 rpm )は 30 kW 、最高速度( 4 速)は 80 km/h である。最高速度はテストコースの制約により 80km/h までの確認となっている。一般的な使用には十分耐える性能であると思われる。
  冷凍機についても、冷凍機電源やコントローラなどの周辺機器を含む冷却系全体として正常に稼働し、超電導コイルを液体窒素の沸点以下に保持できることを確認しており、さらに今後走行実績を積み重ねて、超電導モータおよび冷却系の信頼性検証を継続する計画であるという。
  開発者である新里剛氏は、「冷却が必要であること、高トルク特性がストップ・スタートの繰り返される用途に大きな効果が有ることから、バスやトラックなど定期的な走行が必要とされる分野が最初の導入ターゲットとして期待できる」と述べている。(あすりーと)

 

          

図 1  超電導モータ                                        図 2  走行実験中の超電導自動車第 3 号