SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.22, No.3 Junel, 2013


 

無冷媒超伝導磁石で 20.1 T を発生!              _東北大学、東芝_

 


 東北大学金属材料研究所と東芝は、 2005 年に世界最高の 18 T の磁場発生する 18 T 無冷媒超伝導磁石を開発したが [1] 、このたび、この磁石を改造、 52mm の常温ボアに 20.1 T の磁場を出すことに成功した。
  18 T 無冷媒超伝導磁石は、 2.52 T を発生する Bi2223 線材の高温超伝導インサートコイルと 15.48 T を発生する 5 層の低温超伝導コイルから構成されている。この高温超伝導インサートコイルは、 77 K での臨界電流値が 90 A 級の銀シース Bi2223 線材と補強用のステンレステープを共巻きして製作されたものであったが、最近では銅合金で許容引張強度 250MPa まで補強された 77 K での臨界電流値が 180A 以上の高強度高性能 Bi2223 線材が入手可能になった。今回、この高強度高性能 Bi2223 線材を採用することにより、コイルの導体占積率が向上、ターン数を 1.6 倍にするとともに、通電電流値も 1.2 倍にすることにより、発生磁場が 2.52 T から 4.45 T にアップグレードした。
  また、低温超伝導コイルの最内層コイルには、臨界電流密度の高い内部拡散法の Nb3Sn 線が採用されていたが、この線材は、臨界電流値が高いという利点をもつもののヒステリシス損失も大きく、マグネットの運用に制限を与えていたため、今回のもうひとつの改善ポイントとなった。
  新しいコイルには、臨界電流密度では内部拡散法に劣るもののヒステリシス損失の低いブロンズ法の Nb 3 Sn 線が採用され、導体断面を矩形にすることにより、導体占積率を向上させるとともに銅比を下げることによって、若干ながら従来を上回るコイル電流密度が確保された。このことにより、ヒステリシス損失を大きく低減しながら、発生磁場も 1.53 T から 1.61 T と若干ながら改善された。
  東北大学金属材料研究所に設置された本磁石の外観を図1に、磁石改良後のコイルパラメータを表1に示す。

                                        図1  18 T 無冷媒超伝導磁石外観写真

 

 

          表1 改良された 18T 無冷媒超伝導磁石のパラメータ

 また、改良後の 18 T 無冷媒超伝導マグネット(今後は 20T 無冷媒超伝導マグネット)の 20 T 通電試験結果を図2に示す。通電試験に問題はなく、新マグネットが約 60 分で 20 T 励磁可能なこと。最大 20.1 T 通電での健全性が確認された。また、従来、 60 分励磁モードで 7 K 強まで温度上昇していた L1 コイル最高温度も 4.7 K に抑えられ、 L1 コイル改善の効果も確認された。

 

東北大学金属材料研究所附属強磁場超伝導材料研究センター長の渡辺教授によれば、現在、 ReBCO 線材のインサートによる本磁石の 22 T へのグレードアップ、およびこれらの技術を使った新規 25 T 無冷媒超伝導磁石の建設がスタートしているとのことである。 ( Strongman )

参考文献

[1] S. Hanai, et al.: "Design and Test Results of 18.1 T Cryocooled Superconducting Magnet with Bi2223 Insert" IEEE Trans. on Applied Superconductivity, Vol. 17, No.2 (2007) pp. 1422-1425.