SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.22, No.1 February, 2013


 

太陽光発電システムに接続した超電導直流送電の実証試験を実施   _ ( 公財 ) 鉄道総合技術研究所_

 


 公益財団法人鉄道総合技術研究所では、将来の自然エネルギー利用を想定し、太陽光発電システムに接続した超電導直流送電の実証試験を実施した。太陽光発電の超電導ケーブル接続による電力供給通電に世界で初めて成功した。鉄道総研では、これまで鉄道向けの直流超電導ケーブルの開発を進めており、鉄道事業で使用するための特性評価試験を行い、実路線に適用可能な超電導ケーブルシステムの研究を進めている。
  鉄道総研 ( 国立研究所 ) に設置した太陽光発電システムを図 1 に示す。本システムは 50 kW 級の発電システムで、太陽光パネルは多結晶シリコン型のものである。 300 枚の太陽光パネルを図 2 に示すような、日照条件の良い立体駐車場の屋根上 (400 m 2 ) に配置し、月あたり約 3,800 kWh を発電できる。これまで、システムの低コスト化やシステム効率の評価を目的に、機器の設置方法、積算日射量、積算交流出力電力量、システム効率および落雷等によるシステムトラブルの発生の有無などを検証した。
  太陽光発電システムの電圧は 250 V で、 5 ユニットで構成されている。 1 ユニットあたり発電電流は最大 35 A である。製作し、接続した超電導ケーブルの外観および断面図を図 2 に示す。全長 9 m( 超電導部 6 m) であり、 P 層、 N 層に対応する超電導線材 ( ビスマス系 ) を配置した。層間はポリイミドフィルムで絶縁し、両端において電流供給用の銅製電流リードと超電導線材を接続している。また、ケーブル内は液体窒素で浸漬冷却とし、真空断熱層にて断熱している。本ケーブルの I c は 190 A 程度であり、太陽光の発電電流値に対して十分な裕度を持つ。製作した超電導ケーブルは、太陽光発電システムの 1 ユニットとインバータ間に接続され、 2012 年 8 月 30 日に開催された鉄道総研技術フォーラムにて公開された。発電量の高い日中の時間帯における測定結果を図 3 に示す。ほぼ一定の電圧で、日光の照度に比例した発電がされており、最大値も超電導ケーブルの I c 以下で通電できていることを確認した。超電導ケーブルを介して送電された電流は、研究所内に供給され、実利用で電力消費された。
  鉄道総研の超電導応用研究室の富田優室長によれば、「国内の電気鉄道路線において、 JR( 在来線 ) の 64% 、民鉄の 93% は直流電化区間であり、鉄道用き電系ケーブルと共に自然エネルギー利用の直流送電ケーブルの開発にも力を注ぎたいと考えている。ケーブルや端末の最適構造の細かい検討が重要で、今回のケーブ ルや小型端末の製作では、同研究室の鈴木副主任研究員や小林研究員が溶接等、器用にその作業を成し遂げてくれた」とのことである。この結果を踏まえ、現在、太陽光発電システムの直流送電線として、さらなる長尺化ケーブルの設計・製作を進めている。
  この研究の一部は ( 独 ) 新エネルギー・産業技術総合開発機構の共同研究事業において実施されたものである。 ( ビショップ通学 )