SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.22, No.1 February, 2013


高温超電導ケーブル配電システムの長期実証運転を開始       _住友電工 _

 


 住友電気工業株式会社 ( 以下、住友電工 ) は、大阪製作所内にある超電導線材製造工場への 3.3 kV 配電系統に、高温超電導ケーブル等から構成される高温超電導配電システム ( 以下、本システム ) を設置し、本年 1 月より長期実証運転を開始した。
  本システムは、 2 本の高温超電導ケーブル ( 各 35 m ) 、超電導分岐箱、既設の電力ケーブルと接続するための終端接続部、これらを冷却する液体窒素循環型冷却システム、監視システムから構成されている。

図 1 .高温超電導ケーブル配電システムの機器構成

 

 

高温超電導ケーブルは、交流 3.3 kV 、 1.2 MVA 、定格電流 210 A ( 最大許容電流 400 A ) の容量を持つ、 コンパクトな 3 心一括型 ( ケーブル外径:約 100 mm ) である。超電導線には、線をスリム・コンパクト化 ( 幅: 2.8 mm 、厚さ: 0.31 mm ) することで交流損失の低減を図った交流機器用途線材として住友電工が販売しているビスマス系高温超電導線「 Type ACT-CA 」を使用している。

図 2 . 3 心一括型高温超電導ケーブルと Type ACT-CA の断面

 

 

 本システムには、データセンター等の屋内配電線など直流を含む低電圧・大電流配電システムへの高温超電導ケーブルの適用を視野にいれた新たな技術が採用されており、長期信頼性、運用、保守技術の実証を行うとのことである。
  線路を見て一番目を引く建屋壁面を使っての 18 m 垂直立上げ部は、ビル内配電を模擬しており、布設工法、高落差条件下での冷媒循環の安定性の実証などを行うものである。

 

 

 

図 3 . 18 m 垂直立上げ部

 

 新しい技術の一例として、 18 m 垂直立上げ部の頂部に見える超電導分岐箱がある。これは少ないスペースで超電導ケーブルの分岐を可能とする接続機器である。本システムでは系統構成上の必要性がないため分岐はしていないとのことであるが、地上から 18 m 垂直に立ち上げたケーブルを分岐箱により 180 度ターンさせて地上に戻すという取り回しの良さをアピールしている。

 

図 4 .超電導分岐箱


 同社の超電導製品開発部長である林和彦氏は、「超電導線で送った電気で超電導線を作ることになるわけですが、別に電気に違いがあるわけではありません。しかし、『超電導線で送った電気で作ると、超電導線はもっと高性能になるんですね?』と言われるくらい性能を向上させて、さらにお客さんにメリットのある超電導製品を開発していきたいですね。」とコメントしている。本システムは無期限での長期運転を行う予定で、そこで得られる運転データを分析して、各構成機器の長期性能を確認するとともに、経年変化に対しての最適な保守のあり方、非常時の保守体制の確立を進めるとのことである。低損失な送配電を実現する技術として期待される高温超電導ケーブルの早期の実用化に期待したい。 ( チョウデンカイ )